-精神疾患に関する労災認定の現状- 私は2006年上半期に関西地区の某企業に中途入社し、入社半年後から企業ぐるみのパワハラを受け、それを起因として鬱病を患いました。昨年労働災害申請を行っておりましたが、申請中の昨年夏に不当解雇されました(法的に労災申請中の解雇は無効のはずですが)。
その直後から会社と調停を行っておりましたが、今年初頭に納得の行かない形で調停が終わり、現在再就職活動中です。しかし労働災害に関しては調停中(今年1月中旬)に審査請求、そして今年3月末に再審査請求を行い、先日その結果が出ました。今回は精神疾患に関する労災認定の行政の対応の「お粗末さ」に関して、筆を執ります。
結論から述べますと、申請は「棄却」(労基署処分及び労働局の決定を全面支持)されました。各処分庁の一連の処分内容及びそれに対する私の意見を以下に記します。
<Ⅰ:労基署判断・・・不認定> ・労働基準法施行規則別表第1の2に定める業務上疾病に該当しない。
・教示内容(口頭)は、「傷病発生日と災害が起こったとされる申請日に隔たりがある」との事。
私が労災申請時に提出した資料は、ICレコーダーによる音声記録(私に対して明瞭に「辞めろ!」と罵声を浴びせた電話記録や会社と産業医の間の矛盾を炙り出したの産業医と私ののオフレコ会話等)をはじめ、社内の(無理矢理書かされた)提出資料、労基署から提出を求められた私が記述した資料等、「客観的資料」が殆どであったにも関わらず、上述の資料内容は全く考慮されず、「労災申請様式の表紙のみで判断」された内容でした。
私は、「上記判断は『画一的判断基準及びマニュアルの下に判断されたとしか思えない』、『処分庁の不作為による判断(表紙のみで判断するのなら30分もあれば十分では?)』と反論し、労働局に対し審査請求を行いました。
<Ⅱ:審査請求(労働局判断)…棄却> 決定書内容を確認してみると、請求人(私)提出資料の中に上記の「ICレコーダー記録(書き起こし文書及びCD-ROM)」が記載されていませんでした。気付いた瞬間、私はすぐさま「企業が行政を買収したのでは?」と言う疑念が起こりました。
調停委員をも愚弄したあのブラック企業ならやりかねない、と。 更には、企業側から提出された資料内容ばかりが判断基準とされた事にも承服出来ませんでした。彼らの提出した資料は私の資料とは間逆で、私に対する誹謗中傷及び抽象的内容が殆どで有ったからです。
私は、「請求人が提出した資料が判断材料に含まれていない事自体、公平な判断がなされていない証拠であり、企業・労基署・労働局の三者が結託して音声記録資料を内部で握り潰しているのは明白であり、企業及び行政が明らかに『労災隠し』を行っていることは明白である」と反論し、厚生労働省(以下「厚労省」と記載)の労働保険審査会に対し再審査請求を行いました。
<Ⅲ:再審査請求(厚労省判断)…棄却> 再審査請求を行ってから約4ヶ月後、厚労省から審議会への出席確認と意見書提出の要否に関する封書及び、今まで私と企業及び処分庁から提出された全ての証拠と記録を冊子にした資料(厚さ10mm以上)が届きました。意見書提出後の1ヶ月後に審査会が行われ、約半月後に請求棄却の裁決書が私の手元に内容証明郵便にて届きました。厚労省の付加的判断を以下に記します(他は労基署・労働局の処分・決定を支持)。
1) 病気の再発に関する医学的客観的判断は無い。
2) 請求人の言う「業務スタイルの感情的批判」に関しては、中途採用された従業員は通常の事であり、本件と因果関係があるとは特段には認められない
特に2)の判断は、何の為の中途採用なのか意味を成さなくなる文言としか捉えられませんでした。違う視点の考えを持った人材を求めるための中途採用のはずです。だったら中途採用する際の費用(求人費用、人件費等)を考慮しても、新卒だけで事足りるのでは?と感じました。
裁決書が届いた約1週間後、証拠として提出したCD-ROMが厚労省より返却されましたが、労基署に提出した同一のCD-ROMは未だ返却されていません。これは労基署が「音声資料など提出されていない」と暗に主張しているとしか考えられないのは、私の勘ぐり過ぎなのでしょうか。
<Ⅳ:問題点> 以上より、私なりに精神疾患に対する労災行政の問題点を以下に記します。
1) 画一的判断基準及びマニュアル的判断しかなされていない
日本の精神疾患に対する認識は、表面上は上がっているように見えますが、実態は中身が伴っていません。しかも労災行政はもっと遅れています。「入院等の処置をとり安静にして居れば徐々に快復する」疾患とは全く別物と考える必要があるにも関わらず、それらの疾患と「十把一絡げ」的判断をしている事自体ナンセンスそのものです。
※ これは、精神障害年金申請に関しても同様です。申請書は、内科や外科等の疾患による障害年金申請書を転用しただけの代物、簡単に言えば行政が「やっつけ仕事」で作成したものに過ぎないからです。
2) 明白な法律違反に対する言及(行政側の不都合な行為に対する説明)は一切無し
再審査請求を行った際、私が最初の段階で提出した音声資料に対する行政側の「握り潰し」に対する違法性の調査に関しては一切触れられておらず、再審査請求の審理会前に送付されてきた資料集の中には、何事も無かったかのように資料として織り込まれていました。都合の悪いことに関しては全く釈明なし、と言うのはどう考えてもおかしな話です。もし立場が逆であれば、彼らは執拗に追求してくるはずでしょう。
3) 企業側の主張が中心の著しく公平性を欠く判断基準
審査請求の決定書を分析してみると、判断基準は私に対する誹謗中傷しか記述していない企業側の主張を全面的に支持し、客観的及び法的判断を中心に記述した私の主張は殆ど考慮されていないのが明白でした。これは明らかに行政の恣意的判断であり、審議の公平性を著しく欠いた判断で、正に「強きを助け、弱気をくじく」判断です。
4) 行政は『盲目機関』か
バブル崩壊以降、終身雇用制度が事実上崩れ、日本でも中途採用がさほど珍しい話ではなくなってから相当の年月が経っているにも関わらず、「中途採用者は『郷に入れば郷に従う』もしくは『上命下服』が当たり前」という様なナンセンス理由にて再審査請求を棄却する行政(厚労省)の判断は「時代の流れを全く見ていない『盲目機関』なのか?」としか思えません。
5) 労災認定にも司法の介入が必要
上記の様な問題点がある限り、精神疾患に対する労災認定は、新聞等では認定が増加していると報じられていますが、真の意味での「公平な判断がなされている」状況とはかけ離れているのが現状です。行政の体質改善が望めないのであれば、労災判断にも司法が介入出来る枠組みを是非とも作るべきでは、と個人的には考えます。
最後に、私の調停及び労災申請は両者とも「全く納得のいかない結末」となってしまいましたが、再就職し、再スタートを切ったときには、この経験を活かし、二度と前車の轍を踏む事は無いようにしたく思っています。
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