欧州の国債金融危機・アメリカの不動産金融危機また来年には中国とロシアの最高指導者が代わる。
さらには世界の火薬庫である中東の「アラブの春」といわれる動乱、これらが複雑に絡み合い世界の戦略関係が急速に変化している。つまりこれまでの同盟関係等は関係ない動きが多く出ている。
例えばアメリカの格付け会社が欧州の国債危機を煽っている。アメリカは将来ドルの地位を脅かすユーロを解体に追い込みたいのである。
欧州の高官が「金融危機はアメリカの方が深刻だ」と語っているのはアメリカの狙いが解っているからだ。「アラブの春」を利用してリビアを侵略することでは欧米は結託したが、アメリカは欧州のブロック化には強く警戒しているのである。
中国とロシアは自分たちのリビアの石油権益が危機にあり、今また武器の輸出先のシリアへの国連安保理の非難決議に警戒している。
欧米の金融危機は、中国とロシアが世界戦略の挽回を図るチャンスであり、特にアメリカが財政危機で大幅な国防費の削減を今後10年間行うことは事実上の「息継ぎの和平」への戦略転換であり、中国とロシアの戦略的攻勢のチャンスなのである。中国は指導者の交代で軍の影響力が今後強まる。ロシアはプーチンの復活で強いロシアを追求することになる。
アメリカは経済危機を克服し、覇権を維持するにはアジア、特に日本と韓国を従属国として支配し続けなければならない。したがって中国と日本の親中派のすすめる東アジア経済圏構想(アメリカ抜き)に反対してTPPを推進しアジアを略奪の対象として「アジア重視」を打ち出している。
つまり複雑な戦略関係は同盟国でありながら、同時に経済的略奪の生贄の支配と従属関係を形成するのである。
中国とロシアは新興の地域覇権国であり、米欧は戦略的には協力しながら経済的にはライバルになりつつある。こうした戦略関係の下でアメリカはアジアを握ることで覇権国として延命を図ろうとしている。
つまり欧米の金融危機が、中国とロシアの冒険的戦略を引き出し、経済恐慌と戦争の危険を高めるであろうことを日本は考慮しておくべきである。
日本はこの戦略的複雑化の世界の中で対米自立を果たす好機としなければならないのである。
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