新世紀ユニオンの経験では、団体交渉で解雇を白紙撤回させたこともあれば、裁判で勝利したのに会社が原職に復帰させず、大幅な賃下げの上で仕事の無い倉庫に配転し、これを拒否すると再び解雇になるという経験もあります。
また解雇の裁判で和解し、未払い賃金を受け取った上で原職に復帰した例もあります。
つまり解雇をどのように闘うかを決定するのは経営者(社長)の人物をどう判断するかが重要となります。
日本の裁判は解雇に勝利しても従業員としての地位を確認するだけなので、たとえ勝っても原職に復帰できるとは限らないのです。
逆に経営に将来性があり、社長も温厚である場合は、原職復帰が正しい選択である場合が多いのです。
また構造的に不況業種であり今後も会社の経営が持ち直す可能性が無い場合は、転籍含みで解雇撤回の裁判を和解による解決金狙いで闘うこともあり得る選択です。
また違法解雇であっても、労働者の側に証拠が少ししかなく、勝てる可能性が低い場合は、解決金狙いで和解も選択せざるを得ない事があります。
解雇の中には背景に大規模なリストラが準備されていて、会社の力を見せつけるため、活動的人物を先行して解雇してくる場合があります。このような場合は、裁判でのすぐの和解は不可能であり、勝利するつもりで証拠を十分に準備する必要があります。
また労働者の仕事中の失敗や事故を能力欠如の理由とする解雇の場合は、入社時の教育訓練が十分でなかったことの証明が必要で、この証明ができないと勝訴も和解も難しいことになります。
つまり解雇撤回の闘争の方法と獲得目標をどこに置くかは、
(1) 経営者の性格・人物
(2) 事業に将来性があるか
(3) 勝利するに十分な証拠
(4) 会社側の解雇理由の程度
(5) 判決までの家族を含めた生活の保証、裁判費用
といった諸条件を検討して決定しなければなりません。
経営者の中には裁判に敗れても絶対に会社に復帰させない、という頑固な人物もいるので、その見極めが重要となります。つまり解雇された場合の闘争目標を定める場合、自分の願望からだけで決めてはいけないという事です。
先に挙げた5つの条件は相互に関連している場合もあります。
例えば、(1)と(2)は関連しています。経営者の資質が悪ければ将来性は無いということになります。
(3)と(4)は表裏の関係にあります。証拠が少なければ会社側の解雇理由を崩せず、証拠が多ければ、会社の解雇理由がでたらめという事です。
証拠が少ししかないのに現職復帰を目指し判決まで争うのはリスクが高くなります。つまり解雇された場合の闘い方は、様々な側面を考慮しなければなりません。
自分の願望だけで相手のある闘いを勝利できないのです。
敵を知り、勝利の必要条件を検討し、証拠をそろえる。資金面も検討しておく、これが「備えてのち闘う」という事です。
こちらが金銭的和解を望んでも会社側が勝てると判断している場合は、和解ですら難しい場合もあるのです。
したがって組合員は勝つための努力、証拠の準備と証人の確保、陳述書を書いてもらうための努力を惜しんではいけないのです。
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