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退職金の法的性格と懲戒による不支給、減額

 これまでの日本の労働慣行として、長期間勤め上げると多額の退職金が支払われるというというのが普通となってきました。
 退職金は法律に規定がないので、支給する(請求する)には就業規則、労働協約、労働契約などで規定されていることが必要となります。これらがない場合でも慣行、個別の合意、従業員代表との合意などが確認されれば支払う義務があるというのがこれまでの判例の考え方です。
 支払い義務が確認された場合は労働基準法の「賃金」という性格を持ち、支払い5原則などの法的規制(保護)の対象となります。
 退職金には大きく二つの性格があると言われています。
 一つは「賃金の後払い的性格」と呼ばれるものです。勤続年数と労働者ごとの基礎的な額などを掛け合わせて算定される場合などがこれに該当し、就業規則や賃金規定などで支払い基準が明確になっている場合はこのような規定が存在する場合がよくあります。
 最近しばしば見かけられるようになってきた「退職金をなくしてその分、毎月の給与水準を引き上げるコースも選択可能」などというケースの場合などはこの「賃金の後払い」という性格から来ることになります。
 もう一つは「功労報償的性格」と言われるもので、退職金の支払いが労働者の退職理由ごとに決められているような場合が該当します。会社都合の退職の場合に自己都合より支給額が多いとか、懲戒解雇などの場合には減額や不支給になる。などという場合がそれにあたります。
 実際の退職金はこれらの二つの性格を併せ持っている場合が多く、争いになった場合には個別の状況を検討しながら判断されていくことになります。労働者としては「賃金の後払い的性格」を重視してそれぞれの事案を検討していくことが要求されるでしょう。「賃金の後払いなのだから辞める時に支払うのは当然」という立場です。
 懲戒解雇の場合に退職金を不支給にするという規定をめぐる判例で重要なものを紹介しておきます。小田急電鉄事件という有名な高裁判例(東京高裁平成15年12月11日)があります。これは懲戒解雇され、懲戒規定により退職金を支給されなかった会社員が懲戒解雇の無効や退職金の不支給処分の取り消しを求めて訴えたケースです。
 懲戒解雇が有効となった場合に、退職金を不支給にしたり、減額したりすることが合法かどうかについては合法説、違法説、一定の要件があれば許されるとする限定的合法説などがあると言われていますが、判例はおおむね限定的合法説を取っているようです。
 裁判所は懲戒については手続きや処分内容の懲戒対象の非行行為の検討などに問題はないとしましたが、「全額不支給」とするには「永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為」であり、それが「会社に対する直接の背信行為(横領や背任)」であるような場合でなければならないとして、職務外の非行(この場合は痴漢の再犯でした)のような場合には「会社の名誉信用を著しく害し」「会社に現実的な損害」を与えるような場合に限る。として20年間非常にまじめに勤務していたこの会社員には3割だけ支給するようにと判断しました。
 これなどは退職金の賃金の後払いとしての性格を重視したものであるということができます。このように退職金不支給に関する判例では退職金の「賃金後払い的性格」の側面と「功労報償的性格」の側面とを考慮しつつ、労働者のこれまでの功労と不支給になった非行との兼ね合いを個別の事例に基づいて判断しているということができます。
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