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不正競争防止法改正 -内部告発と営業秘密侵害-

 経済産業省は、2009年2月、不正競争防止法の改正案を今通常国会に提出した。主な改正案は、不正競争防止法における営業秘密侵害罪が適用される時点を、営業秘密の「使用」・「開示」から、その前段階の「不正取得」・「不法領得」へ早めること。さらに同罪の適用を「不正競争の目的」から「図利加害目的」に目的要件を緩和することである。

 法の改正のデメリットとして、日本労働弁護団は、『改正案は「不正競争防止法」を「企業情報持ち出し処罰法」に変質させ、労働者の権利に重大な侵害を招く危険が大であり、到底容認することができない。』と意見表明している。また、弁護団は労働者が感じると考えられる萎縮効果として、以下のものを列挙している。

1.労働者の自由な職業選択に対する抑止
2.労働者の内部告発に対する抑止
3.労働者が残業代等の請求を行う場合
4.労働者が人事等について自己の業績を根拠にしようとする場合
5.労働者が労災職業病の原因解明を行おうとする場合
6.労働組合への相談や労働組合の正当な活動

 勤め先の不正を内部告発し、報復人事を受けている私は、本稿では「内部告発に対する抑止」に焦点を絞りたい。

 内部告発者を保護する法律として、公益通報者保護法が制定済みである。しかし、新世紀ユニオンがかねて指摘してきているように、公益通報者保護法は「企業秘密漏洩防止法」とも揶揄されるザル法なのである。その根拠のひとつに、『企業外への通報要件として「通報内容が真実であると信じる相当の理由があること」が告発者に課されるが、証拠収集過程の行為については同法での保護規定がない』ことが挙げられる。

 不正競争防止法の改正案をまとめた委員会においては、表面上、「正当な内部告発行為等には図利加害目的が認められず、営業秘密侵害罪の処罰対象とはならない」と明らかにされたことになっている。しかし、これは明文化されているわけではない。ではこれを素直に信用してもよいものだろうか。

 内部告発時の証拠収集方法が裁判で大いに争点になった有名な事例として、宮崎信用金庫事件がある。この事件では、従業員が勤め先の不正を解明するために、社内の機密情報を無断で取得し、証拠として提出した行為が懲戒解雇となった。本事件は、地裁では懲戒解雇が有効、控訴審では懲戒解雇は無効とされた。

 内部告発をされて困る企業側が、徹底的に告発者に報復するケースもある。最近では、新銀行東京の男性元行員が、同行の問題をマスコミに公益通報したが、守秘義務違反として損害賠償を提訴された事例が報告されている。

 さて、日常では、企業内の営業秘密の指定は、使用者の裁量的判断にゆだねられると考えられる。企業は内部告発者や組合の活動家などを恣意的に攻撃できる。法改正後の裁判では、「図利加害目的」が告発行為の正当性を判断するポイントとなるであろう。

 営業秘密侵害罪に問われなくても、企業側はその他の理由をでっちあげ、解雇、降格、配転を行うことができる。それは、今日日本を代表する一流企業でも横行している。委員会ではこうした労働者のデメリットについての審議が十分行われたのであろうか。

 最低でも、公益通報者保護法および本改正案内に、「労働者の日常の活動や正当な内部告発行為等には図利加害目的が認められず、営業秘密侵害罪の処罰対象とはならない」ことを明文化すべきであった。

 このような法改正が続けば、労働者の表現の自由や、本性に基づく告発行為はいずれ弾圧されてしまうと懸念する。この懸念は、同法の制定と改正の流れを見てみると、より現実的に感じられる。

 不正競争防止法は、平成2年の法改正により、「営業秘密」の不正取得・使用・開示行為に対する営業秘密の保護規定が創設され、営業秘密の侵害行為に対する差止請求権や損害賠償請求権が規定された。平成15年の法改正では、「営業秘密侵害罪」が設けられ、違法性の高い侵害行為は刑事罰の対象とされた。平成 17年及び18年の改正では、段階的な罰則の引き上げや退職者処罰も導入された。

 今回の改正では、「営業秘密侵害罪」の適用範囲の拡大が盛り込まれているのである。いずれ、企業側が労働者の「図利加害目的」の立証責任の放棄を狙い、更なる要件緩和を要求するのではないだろうか。

 不正競争防止法改正は、資本主義経済下において、グローバル企業の競争力強化の大儀名分のもとに、営業秘密を守る法律である。従って、残念ながら、本法案が国会を通過する見込みが強いと考えられる。けれども、告発者はこんなことでひるんでいてはならない。我々労働者がすべきことは、保身を考えて不正を見て見ぬフリするようなことはせず、公正な社会を実現するため、社会の一員としての責任感を果たすことである。
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