安衛法で疑惑のメンタルヘルス対策 2011年12月2日に労働安全衛生法の一部改正?案が第179回国会衆議院で議案として受理された。空転で遅れているが今秋にも成立予定とされている。
この法律案の目玉は、定期健康診断でのメンタルヘルス対策の義務化だ!
内容は「医師又は保健師による社員の精神的健康の状況を把握するための検査を行うことを会社に義務付け」である。
NHKの今年4月の「新型うつ」の報道特集といい、仕込みは進んでいる!
一見麗しい厚生労働省メンタルヘルス対策だが、内容を知るほどに、フクイチ事故(福島第一原発事故)のホールボディカウンター(WBC)等に似た、被害の上塗りときな臭さを感じる!
安衛法メンタルヘルス対策の問題点1.検査結果の取り扱い
健康診断実施には相互に義務がある。しかも行政通達(1972年9月18日付け基発第602号)によると、健康診断の費用は会社が負担すべきだとされている。ただし、健康診断を行っている時間は、必ずしも法的に有給とする義務はない(同通達)。
また、常時50人以上の労働者を使用している事業者は、労働基準監督署に健康診断の結果を報告する義務がある。
今回のメンタルヘルスの検査結果も事業者には直接行かないことになっているが、他の定期健康診断同様に、労働者の同意があれば医師等から事業者への通知も可能ということになる。
事業者は、面接指導の結果に基づき、面接指導を行った医師の意見を聴き(改正案第6項)、必要な場合には、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少その他の適切な就業上の措置を講じなければならない(同第7項)。ということは、実際には同意を求められ、結果は事業者に行き、人事考課や万が一の労災事案では免罪符として利用されるだろう。
医師による面接指導についても、悩ましい。面接指導を受けることを希望しないともし労災事案がでても事業者は免責されるだろう。希望すれば、面接の申出をした労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないとされているが、どんなことが不利益にあたるかは、労務管理の実態に応じて判断されることになると曖昧だ。
事業者は、申出のあった労働者について、産業医や地域産業保健センターの医師に対し面接指導の実施依頼を行い、医師から労働者に直接面接指導が行われることになり、事業者は、この面接指導の結果を記録しておくことが義務付けられる(同第5項)。秘密といえない状態である。
2.真の専門家不在の検査・対策 メンタルヘルス関連予算は自殺対策などの社会的な要請を受けて増大している。
しかし、自死に追い詰められた層の分析から当然出てくるべき職業環境や生活環境の悪化を含めた総合的な対策が全くない。
厚生労働省という、一つの省で対応可能にもかかわらず全てコラージュ型だ。議員も官僚も、省力で耳障りのよい、ついでに利権が拡大できるものを誤訳や意訳だらけで翻訳し打ち上げて悦にいる。
具体的には、抗精神病薬の薬漬け医療の促進!や、独立行政法人による大人の幼稚園!=リワーク事業、薬批判がでると2010年魂入れずの認知行動療法の保険点数化。いずれも、苦しむ患者と膨大な未受診群は置き去りの利権付き形骸事業ばかりだ。
○医療 長くなるが、医療については以下の記事が全てを物語っているので、日刊現代社のゲンダイオンライン無料記事を引用する。
厚労省が突っ走る メンタルヘルス利権
【政治・経済】
2012年5月9日 掲載
現場の産業医は猛反発
「厚労官僚の暴走を許すな」――。厚労省が進める職場のメンタルヘルス(心の健康)検診の義務化に対し、メンタルヘルス対策に取り組んできた現場の産業医らが怒りの声を上げている。
メンタルヘルス検診の義務化は昨年末、労働安全衛生法改正案として国会に提出された。企業に対し、健康診断とは別に検診を義務付ける内容で、「ひどく疲れた」「ゆううつ」など9項目のストレス症状を基に社員が自己評価する方法が検討されている。厚労省は、うつ病などの「早期発見につながる」としているが、日本産業衛生学会などは「トンでもない」とカンカンなのだ。
都内の産業医がこう言う。
「心の病は、職場や家庭環境など複合的な要因が考えられるものです。通常の健康診断と切り離し、メンタルヘルス検診だけで判断するのは、医学的に合理的ではありません。それに厚労省が考えているストレスチェックの評価方法は科学的に十分確立されたものではない。検診義務で本来なら治療の必要がない患者を増やす恐れもあります」
国会に改正法案が提出されている段階で、現場の学会が反発するのは異例だ。それでも突っ走る厚労省の狙いは何なのか。
「旧労働省の医系技官の天下り確保の一環でしょう。労災で食ってきた連中が、じん肺などが減ったために仕事がなくなり、メンタルヘルスにシフトしている。メタボ検診でも天下り先が新たな財源で潤いましたが、それに味をしめてメンタルヘルス検診も義務付けようとしているのでしょう。メンタルヘルス利権の規模は数百億円に上るとささやかれています」(事情通)
厚労官僚が熱心なのは国民の健康を守ることじゃない。利権と私腹を肥やすことなのだ。 以上
○心理 筆者は認知行動療法一辺倒のメンタルヘルス対策には懐疑的である。
しかし、きちんとしたスキルをもったプロが対応すれば、一定層に対して即効的な効果があることは認める。だが、今回のメンタルヘルス対策をみても、本来でてくるべき臨床心理士はまだ国家資格化も含めて表舞台にはいない。
答えは簡単だ。コスト増や医療的な分野との境界分野での競争を嫌う医師の反対ということもあるが、臨床心理士は、スクールカウンセラーや指定大学院など文部科学省というヨソのシマの関係者だからだ。
したがって、医療との連携は必要だが、本来は見立とスキルと副反応への独自の心理ケアが必要な認知行動療法においても、3分間診療のように短時間診療でも忙殺されている医師のみが、保険条件「1回の面接時間が30分以上」で実施を認められる。
一方で、認知行動療法はマニュアルが充実しているので、素人でもパクリ易いので、雨後の筍のように団体認定のような充分トレーニングされていないカウンセラーや件の独立行政法人の職位カウンセラーも生兵法を行う。後ケアについては責任なしだ。
また、健康診断などをはじめ、国家資格ということで、保健師なども多用される。例の定期健康診断に関わるのも実質は保健師だ。心身ともの健康を扱うという観点では保健師の対応も必要だ。メンタルヘルス対策の重要な一員だろうが、現状やこれから安衛法で進めていく方向は職務の専門性や看護師でもある方々なのでチーム医療の精神から外れているように思える。
私がよくお目にかかるのは「最近メンタルヘルスがさかんなので、勉強にきた」沢山の保健師の方々だ。しかももう現場では企業の相談活動をしている。カウンセリング内容を聞くとぞっーっとする内容も多い。
このように、現在のメンタルヘルス界は、専門家不在で、メンタルヘルスという砂糖に集まってきた素人集団や利権者が多い。
3.ハラスメント対策なき復職対策 日頃メンタルヘルスについて対応していて、またセクシュアル・ハラスメントやパワーハラスメントの対策の会議やセミナーにでると、メンタル不調者の少なくとも9割はなんらかの職場問題、主にハラスメントがある環境にあったことがトリガーとなっているといわれていて、これは皆様も実感できることだろうと思われる。
しかし、筆者はかなりの数の安衛法改正の関連のセミナー等に出席し必ず質問しているが、肝心のハラスメントを前提としてのメンタル不調者対策は皆無であるし、厚生労働省もその点をふまえた施策をおこなう意思は今のところない。
復職計画については首都圏の労働基準監督署なども重視して指導するところもあるようだが、非常に酷なことに、さんざんハラスメントを受けた被害者のはずが、治療の手に余ると「新型うつ」といわれ、生活習慣の改善とか職場の環境への適応など「やよ、励めよ」の叱咤連打のリワークが厚生労働省の方針である。
順番が逆になったが、メンタルヘルス対策は1次予防、2次予防、3次予防が必要だ。特に30代以下は就労環境の改善を含めた予防策が必要だ。
主原因となっているハラスメントなどの厳しい労働環境を放置しているのは、予防も対策を行っていないことに等しい!
1人のメンタル不調者の影には沢山の予備軍がいる。その予備軍にだけに、不調休職者の復職場面で重い負担をかけている現状は、不調の連鎖と復職の成功率の低迷をもたらしている。
真に労働安全衛生を思うのならば、きちんとした改正を行うべきである。一般労働者にも危険な定期健康診断でのメンタル検査実施は再考を望む。
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