労働基準法は常時10人以上の労働者を使用する使用者(会社)に就業規則の作成を義務付けています。この場合の10人には役員は含まないが常時使用のパートやアルバイトを含みます。
労働裁判や労働審判では就業規則の内容がポイントとなるので労働者は入社時に就業規則のコピーをもらっておくようにすべきです。
たとえば残業代請求の事案であれば就業規則の賃金の形態(通常の賃金か裁量労働制か変形労働制か年俸制かなど)をつかんでおく必要があります。また就業規則の処分の項目や解雇事由については、会社の経営者意思として行う懲戒処分や解雇の正当性を左右することがあります。
新世紀ユニオンの経験によれば懲戒処分された労働者が就業規則の解雇条項と処分条項をコピーしてほしいと労務に再三求めたのに会社側が関係のない箇所のコピーを渡したり、また解雇された労働者が内容証明で解雇条項と処分の条項をコピーして送ってくれるよう求めたのに、会社が渡さない場合、裁判や審判では労働者の側が有利になります。
裁判中に改ざんした就業規則を証拠として出してきたり、あるいは解雇裁判で原告(労働社側)が出した証拠の就業規則を「すでに廃止したもの」と主張してきた例があります。
最近の解雇事案の多くが就業規則を周知していない例が多くあります。こうした企業は経営者が姑息にも労基法違反の労働者管理を行っていることの反映とみていいのです。そうした会社は残業代を払わず、有給を取らせず、休憩時間を与えず、違法な働き方をさせている例が多いのが特徴です。
就業規則は労働者だけでなく経営者も守らねばなりません。したがって労働基準法違反の労働によって超過利潤を獲得しようとする会社は、就業規則を労働者に見せないようにしています。
人間は悪いことをしていると、そのことに気付かないように相手の注意をそらしたり、違法行為を知ることになる資料を見せたくなくなるものなのです。つまり姑息な人間は思考方法も姑息なので、その行動も決して堂々としたものにならないということです。
そういうわけで就業規則を周知していない会社は必ず違法行為をしているので、それを調査しておくことが重要です。
多くの判例では、就業規則に定められた解雇事由以外の理由では解雇できないとしています。したがって懲戒解雇であるのに会社が就業規則の解雇関係条項を見せないのは解雇条項の拘束力から自分の会社に不利と判断してのことと見てよいでしょう。
労基法では就業規則は書面による交付、あるいは常時事業場の見やすい場所への掲示、または備え付けなどによって労働者に周知しなければなりません(労基法第106条)しかし実際には就業規則を金庫に入れて労働者に一切見せない経営者が多いのです。
就業規則は周知して初めて価値を持つのであり、それを金庫に入れることは隠すことでしかなく、会社にとってマイナスだと知るべきです。
労働者が解雇されて就業規則のコピーを求めるときはユニオンの指導の下、必ず内容証明郵便で行うようにしてください。就業規則を周知していない証拠になります。
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