2010年の1世帯当たりの平均所得が前年より11万6000円減って538万円となったことが、7月5日に厚労省の調査でわかった。
この国民生活基礎調査(11年度)によれば生活が「苦しい」と感じる割合は61.5%で過去最高となった。2010年の賃金水準は25年前の賃金水準とほぼ同じである。
過去最も賃金が高かった1994年の664万2000円からは実に126万2000円も年収が減少している。また18歳未満の子供がいる世帯では前年より39万2000円減り、年収が658万1000円だった。
11年7月時点の生活意識は「大変苦しい」が29.1%で過去最高、「やや苦しい」が32.%だった。この調査は11年6~7月に実施されたもので、世帯構成については約4万6100世帯、所得や生活意識については約7200世帯の回答を集計している。被災地の岩手・宮城・福島の3件は調査対象から除かれている。
この厚労省調査が示しているのは、労働の非正規化の拡大の中で労働者が貧困化を続けていることである。特に最も賃金が高かった1994年からは126万円も年収が減少しているのである。これでは個人消費の減退が続きデフレ経済となるのは当然である。
これが家畜化した労組の反動的上層連合としての「連合」の発足の「成果」なのである。それだけではない大企業と大金持ちに減税し、労働者・人民に消費税増税され、さらなる個人消費の縮小が進行し、一層国民経済が疲弊していく局面にある。
労働者の非正規化が労働者家庭の貧困化と結びついていることは注目される。雇用が安定せず、しかも賃金が安いのだから生活が「大変苦しい」のは当然である。この層が約30%であるのは、非正規の割合と重なっていることに注目しなければならない。
この間厚労省が進めた「雇用の流動化」とは、労働者階級の貧困化の別名であった。日本社会は個人消費がこうして縮小し、大ブルジョアだけが甘い汁を吸う社会となってしまったのである。
最近は労働相談を受けていても弁護士の着手金が払えない労働者が増えている。預貯金がない人が増えているのであるが、これも労働者の貧困化の現れである。
労働者の賃金が10万円台では、違法解雇されても裁判や審判を闘う意義が低下する。弁護士費用を考えるとペイしないのである。例えば審判の和解金の平均が7カ月では弁護士の着手金と成功報酬を考えると、収入が15万円ぐらいでは審判を闘えなくなりつつある。収入の少ない人のために労組の専従にかぎり審判での代理人を認める必要が出てきている。
弁護士の話では審判や裁判の解決金の相場が低下してきているというのであるが、審判や裁判がペイしなければ、今まで以上に泣き寝入りが増えるのか? それとも大衆闘争で闘うようになるのか、いずれかであろう。
労働裁判や審判の解決金の相場を低下させることが今後の日本の労働運動にどのような影響を与えるか注目される点である。
同様に労働者の貧困化が労働運動に与える影響を見ておかなければならない。貧困化が労働者の階級意識の覚醒となるのか注目したい。
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