新世紀ユニオン発行のニュース

初めての証言台

 不当に解雇されて、早いもので1年以上が経つ。裁判所に訴状を出すということは何分初めての経験だから、果たしてこの先どんなことになるのかと思いながら毎日を過ごしてきた。

 これまでは、大体二か月に一度のペースで裁判所へ出向き、書類を提出するということをするだけで、とりたてて何をするわけではないことが続いた。一体いつになったら決着というものがつくのだろう、そう思った矢先、とうとう証人として裁判官の前で尋問を受けることとなった。

 いつかその日はやってくると思っていたが、実際に日程が決まってからは、「どうなるのだろう、きちんと受け答えできるのだろうか」という不安が、片時も頭から離れることはない。

 その日が近づくにつれ、連れ合いの方が尋問を受ける私自身よりも心配の度合いが濃くなり、ともすれば重苦しい空気が家の中に漂うことになってしまった。

 不安に押しつぶされそうになる時には、「私は何も悪いことをしていない。本当のことを話すだけだから、大丈夫」そう自分を励まし続けた。

 尋問を受ける日は、ある意味待っていた日でもあったのだが、それでもどこか怖い日であった。しかし、比較的、落ち着いていることができた。というのも、傍聴席には連れ合いの他に、ユニオン関係者が多数つめかけてくれたからだ。みんな私の味方だ、仲間が応援してくれている、そう思うと勇気が湧いてきた。

 訊問を受ける時は、テレビ番組等で裁判の場面を演じているとおりだ。始まりは、裁判官の前で被告側とともに宣誓をする。相手側の声を聴きながら、「本当に嘘はいけないよ」と心で相手側につぶやいていた。

 まずは被告側への尋問が始まり、私は連れ合いといっしょに傍聴席で聴く。被告の話は、黙って聴くには耐えがたい内容だった。「さっき宣誓しただろう、嘘はいけないんだよ。」と何度も突っ込みを入れたくなる。

 例えば、私が短期大学への移籍をのむ条件をいくつか提示したというのだ。「条件って何」というのが私の気持ちである。聴いていると、高槻キャンパスでの授業は受け持たなくてよいようにして欲しいとか、研究室は今までとおり京都キャンパスにおいてくれ、などであった。

 そんな条件など思いついたことがない。被告側証人はどこからそのようなことを作り出すのだろう。こんなことが、かれこれ1時間くらい続いた。まさに、怒りを超えてあきれる答弁ばかりを聴くこととなった。

 さあ、自分の番だ。訊かれたことに一つひとつ答えていく。難しいことはない。すべて本当のことだから。作る必要も、飾る必要もない。ここで、自分の話すことはすべて記録として残る。私は正面を向き、裁判長の顔をみながら、できるだけ書記官の方が書きやすいように話すスピードも考えて答えたつもりだ。

 それでも、被告側の弁護士から「一生にかかわる大事なことと思ったにも関わらず、なぜ電話で学長に面談を申し込まなかったのか」としつこく聞かれた時は、さすがにむっとして、口調が早くなり怒気をはらんだ言葉使いになってしまった。

 「父が危篤で、高齢の母ひとりに看病させるわけにはいかず、毎日交替でついていたからです」。そう、私のこのことばの重さを被告側弁護士ならびに被告人はわかっているだろうか。

 病床で、「大学でうまくやっているか」と訊く父に、「大学側から必要性を説かれもせず籍だけを短期大学へ移ってくれといわれ不安でいっぱいなの」と言いたくなるのをこらえ、「大丈夫」と笑顔で嘘をつかなければならなかった気持ちを。

 それなのに被告側弁護士は、たたみかけるように、「移籍は一生に関わる重大事だと思っていたのでしょう。学長に電話くらいできたはずではないですか」と言うのだ。

 「父が危篤だったのですよ、いつ息をひきとるかわからなかったのです。看病していたんですよ。(電話など)できませんでした、私はそういう人間です」とつい声を荒げてしまっていた。

 この国では、裁判に関わることを異様に嫌悪する風潮があるのはなぜなのだろう。「裁判をするような人はたとえ勝訴しても、再雇用されることはない」とまで元同僚のひとりに言われた。それはおかしい。

 誰しも好んでもめているわけではない。理不尽なことに巻き込まれ、やんごとなく裁判に至ったのだ。なぜ、それを嫌う風潮があるのか。こんな風潮は止めにしよう。そうでなければ、複雑に絡まってしまった人間関係について、きちんと整理してもらうことができなくなる。

 やんごとなく巻き込まれてしまった場合、あるいは泣き寝入りを余儀なくされても、そのままでよいというのか。誰しも追い詰められる可能性がある。私は泣き寝入りするのは嫌だ、おかしいと思ったことには、「なぜ」と問う、それだけである。

 今回、大学側から突如いわれた系列校の短期大学への形式的移籍について、形式的移籍とは何なのか、なぜ私が移らなければならないのか、ということについて、私は質問しただけである。するとなぜか、懲戒解雇の通知を受け取ることになった。あなたがもし私だったら、黙って退職しますか。キャリアを失ってしまっていいのですか。

 ユニオンに加盟することができなかったら、ここまで闘うことができなかった。「苦難は人を練磨する」、「そなえてのち闘う」、ユニオンはたくさんのことを私に教えてくれている。

 あなたがもしひとりで困難に直面しているなら、迷わずユニオンに加盟し、ともに今の世の中の理不尽さや納得のゆかないことと闘う同志となって欲しい。

 これを読まれるあなたは、社会から必要とされている貴重な人材だ。頼もしく信頼できる仲間があなたを待っています。

 金川こと齋藤由紀
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!!ここに掲載の広告は 当ユニオンとは一切関係ありません!!
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