今年度に入って、2度ほど長距離バスによる高速道路上での居眠り運転による乗客の死亡事故が起きています。
その原因の1つとして、運転士の乗務時間が挙げられています。国交省による運行管理者への責任追求ばかりがよく目立ち、労基署が動いたというのは聞いたことがありません。
というのは、従業員である運転士がけがをしたわけではないからです。仮にあったとしても労基法による保護の対象はたった1人です。
というわけで、大きな事故が起きる→国交省による業務停止処分→基本動作ができていない→会社をつぶしたのは運転士の責任、という図式です。結局のところ、「乗務前点呼ができていない」や「車両点検をしていない」で労働者個人の責任として片づけられます。
国交省はトラックやバス会社に営業の許認可を与えるのにすさまじいぐらいの書類監査や実地監査を行うと聞いています。
これは、交通事故を未然に防ぐというのが建前でしょうが、実際には警察や労基署(厚労省)から横やりが入ると困るからなのです。国交省と厚労省の縦割り行政が招いた事故なんです。
ところで、長時間自動車を運転する時は「2時間に1度30分間」の休憩が必要だとされています。プロドライバーなら通用しない常識なのでしょうか。
この常識からいえば、2人乗務などの交代要員が必要なはずです。あの近鉄ノンストップ特急でさえも交代要員が乗務しています。運転士の資格を持った車掌と交代するやり方です。
交代後の運転士は終点まで車掌をします。ところが、事故を起こしたバスは、運転士1人だけで長距離・長時間を運転させていたのです。交代要員なしで。
旅行業界やバス業界では、価格競争が激しいです。近畿地方から東京へ向かうのに、新幹線の約半分から3分の1で行けるのです。その価格減少分はおそらく乗務員1人だけで運行するからに他ならないからでしょう。
高速バスは、本来は鉄道と競争するのではなく鉄道でカバーできない区間を走行するのが目的です。
近い将来は、バス専用レーンやバス専用道路を設けたり、ATS(自動列車停止装置)に準じたものが必要かもしれません。また、ワンマン運行ではまずいのです。交通事故防止だけでなく防犯上の観点からもそうです。
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