新世紀ユニオン発行のニュース

実のある職場復帰支援を

●使用者責任放棄支援の厚生労働省

1 実態調査なきメンタルヘルス行政

 傷病休の中でも重点的な対策の必要が言われるメンタルヘルス不調者については、「1ヶ月以上欠勤・休職者がいる企業は63.5%」「過去にメンタルヘルス不調で休職した社員のうち,完全に職場復帰できた割合は「半分程度」が4社に1社で最多。」( (財)労務行政研究所「企業のメンタルヘルス対策に関する実態調査 」2010年)

 厚生労働省のうつ病休職率からは2004年の時点でも45万人程度(島 算定)との数字もあり、心証誘導感のある上記調査でさえ増加している。

 しかし、原発震災に関わる健康被害と同様に、厚生労働省はきちんとした調査すら行わずにきている。教職員に関するメンタルヘルス不調休者の調査があるがこれは文部科学省が行っているものだ。

 現状を知らなくてどのような対策をとろうというのだろうか?

 「メンタルヘルス検診の義務化」や「新型うつ」など新たな利権確保や責任逃れに走り、肝心の「支援」にはなっていない原因は、まず厚生労働省が現実を正しく見ようとしないことに尽きると思われる。

2 事業者の防衛支援の指針と手引き

 厚生労働省は、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針、平成18年3月策定)と、平成24年7月にも改訂された「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」で、具体的に事業場で行うべき対応について方向性を示している。

 いずれも常時50人以上の労働者を使用する産業医及び衛生委員会設置義務があり、事業場内産業保健スタッフがいる大手の事業場を想定している。

 昨今「休職は労働者の権利ではない、解雇猶予である」と突っ張りきれない現実にあり、訴えるエネルギーが残っていない方が多いにも関わらず係争が増加している事業者に対しての免責のための対応を説く心優しい支援になっているように、厚生労働省系のセミナーや講習からも感じられる。

 今回の手引き改訂では試し勤務での労災適応の可能性の部分が削除されている。それでもまだ指針や手引に沿い対応してくれれば、かなりの方々が救われるはずだ。

●自動退職の増加と判例

 傷病による休職では、傷病が回復せず休職の期間が満了になりまたは若干の休職の延長ののちに自動退職となるケースが増加しているといわれている。

 多くの場合は、厚生労働省手引きの「職場復帰支援の流れ」の<第2ステップ>である労働者側から主治医から「職場復帰可能の判断が帰された診断書」は提出されている。それにもかかわらず、事業者側が復職に向けて対応しないという形をとる。

 このような復職の可否についての争いとしては、①休職期間満了時に労働者側が傷病の回復を立証責任の所在、②復職可否の判断基準が問題となる。

 ①立証責任については、「使用者側に復職を容認し得ない事由についての主張立証責任を認めた」判例がある。

 ② メンタルヘルス不調者ではないが「後遺症の回復の見通しについての調査をすることなく」「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当であるとした」などの判例もある。

(弁護士稲山 理恵子「休職期間満了時の復職の可否について:OIKE LIBRARY NO.26」)

 筆者も退職という重い結果をまねく職場復帰の可否の判断である以上当然と考える。
 期間満了退職に追い込む事業者の暴走は、組合等の助言をもとに、きちんと対抗していかなければならない。

●職場復帰の可否の判断~産業医等

 職場復帰について、上記のように主治医の診断書がでている場合に事業者が否とする場合に、産業医または会社の指定する医師の受診結果を、判断根拠とするケースが増えている。

1 主治医と、産業医等

 産業医は、労働安全衛生法施行令第5条により常時50人以上の労働者を使用する事業場に設置義務がある。

 また、「産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。」 (労働安全衛生法 第13条 第3項)の勧告機能を拡大解釈して、「主治医は治療をする立場であり、日常生活が送れるレベルまで回復しているかどうかを診断する」が、「産業医は、日常生活ができるレベルではなく、ストレスがかかる勤務ができるレベルかどうか、企業内の状況を把握した上での医学的な判断ができる立場」にいるという対応をとることがある。

 しかし、昨今の裁判では、裁判官が産業医等の役割について勘違いをしていることもあり、産業医どころか復職判定において、会社が指定した医師に診察を受けさせることは認める判例もでてきている。逆にこれを拒否したため休職満了後の解雇(主治医は復帰可としていた)が認められた事例もあるので、就業規則等をチェックした対応が必要である。

 しかし、産業医はあくまでも、「診断はできない」あくまでも「意見」である。最終的に可否を判断するのは、事業者なのであり、産業医やまして産業医のいない事業所での会社指定医には診断する権限はなく、医療のことが素人の人事担当者や事業者が判断をする際の「産業医等による医学的見地からみた意見」でありあくまでも参考にするだけであり、規定が無い場合には受診は任意なので、この点は充分踏まえた上で、事業者の対応や責任をみていくことが、職場復帰の際には重要となる。

 主治医が復職可能と言っている以上、それを覆すには、かなり明確な理由が必要となる。

 まして産業医といえども診断はしないので、医療行為上重い診断行為をする専門医の判断(つまり主治医の診断)で最終的に判断されるべきである。産業保健衛生の専門医も「医療に関わる判断は経時的に関わり治療行為を行っている主治医の診断によるべき。かなり特殊な業務内容など、よほどの事情が無い限り、主治医の診断によるべきである。まして産業医の設置のない事業場は主治医の判断による。むしろどうしても可否に迷う場合には、患者の同意をとり同席の上で業務内容等について主治医に情報提供をして追加した意見をあおぐ必要がある」との見解である。

2 産業医の判断資格のチェック

 産業医は、事業場が小規模の場合は嘱託でもいいとなっているが、産業医は、衛生委員会への出席と、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。 (労働安全衛生規則 第15条 第1項)義務を負う。

 意外とこの努力義務を負っていない産業医も多い。また、メンタルヘルス不調なのに精神科や厳密な定義での心療内科専門医でない産業医もまだ存在する。

 さらに、休職や休業前や休業中になにも対応がなく、判断場面ではじめて登場で、述べる意見では、可能の診断を覆す資格はない。

 従来、産業医とは、「労働者の健康を保持するために必要な措置」や「健康障害の原因調査及び再発防止措置」をとる役割を有するので、従業員がスムーズに復帰できるように、事業場と話し合いながらプランを立てることについて関わり、復帰直後にはどの部署で、どのような業務内容を行うか。分量はどの程度か、残業や土日出勤は可能か、ハラスメント対応は適切かなど、職場復帰に向けての環境整備を行うために医師として役割をはたすべき立場にある。

 さらに<職場復帰支援第5ステップ>職場復帰後のフォローアップについても重要な役割を果たすべき立場にある。

 義務を負わない対応については、また産業医の役割を超えた対応については、既成事実化する前に正さなければならないと考える。

●真のメンタルヘルス施策を

 厚生労働省及びその関連の独立行政法人等が行ってきたメンタルヘルス施策は、厚生と労働の両方を管轄する省として非常に問題がある。

 安易な退職者の増加策は、国民健康保険にもかなりダメージが憂慮される。

 医療のあり方や生存に関わる権利、労働の面からは労働者の基本的な権利が保障されず労働の現場のますますの崩壊があることを深刻に受け止める必要がある。

 メンタルヘルス不調は、セクハラやパワハラ等の職場問題を原因としているケースがほとんどである。特に20代や30代の増加が著しい。

 本腰をいれた総合的な施策や支援を急がなければならない。
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