安倍首相が、政府と経営者団体と労働団体の代表からなる「政労使会議」をスタートさせた。安倍首相は、来年の4月の消費税増税までに賃上げを軌道に載せないとアベノミクスが失敗する事を理解しているのである。おそらく考えているのは「政労使会議」で所得政策的に賃金を上げるつもりなのである。しかしこのやり方では部分的にしか賃上げは出来ないであろう。
日本における賃金レベルの傾向的低下は「労組の家畜化」と「労組幹部の反動的上層連合」さらには労働力の流動化(=非正規化・外国人労働力の解禁等)にその原因がある。
安倍政権は、労働裁判で被告企業が敗訴しても金銭で解雇できる制度(金銭解決制度)や解雇の自由化を導入する事を進めている。これは事実上労働組合法の不当労働行為を空洞化する行為であり、これでは日本の労組の家畜化が一層進む事になる。
一方で労働面の規制緩和を進めながら、他方で賃上げを「政労使会議」で進めようとすることは安倍政権は相矛盾する政策を行っているのであり、このことは政策立案者たちの理論的・哲学的脆弱性を示すものである。
労働者の賃上げを進め、同時に雇用の安定性を強めて個人消費を促すこと、この二つを両立させなければならないのに、解雇の自由化で雇用不安を促しながらでは、賃上げをしても消費には回らないであろう。かっての日経連が「強い総評」の下で春闘相場の確立で、高度成長を実現したように、労働組合が強くなければ賃上げは実現せず、国民経済は活力を持てないのである。
従って安倍政権の「政労使会議」が、賃金を上げてアベノミクスを成功させるのは難しいのである。安倍政権とその経済政策担当者は、アメリカ占領軍の戦後改革、とりわけ「労働改革」が目指したのは、強い労組を生むため経営者側の不当労働行為を規制する労動組合法にこそ、戦後の日本経済の復興と高度成長の秘密があったことを学んだ方がいい。
ところが安倍政権は、「新しいユニオン」を潰すために解雇の自由化を推進し、他方で「政労使会議」で賃上げを誘導しようとしているのである。
賃上げを誘導するなら強い労組を作れるよう政策を導き、経営側が労組を手なづける「労組の家畜化」を規制する以外の方法はないのである。一度強欲の資本主義を経験したものは社会的規制で、一方的賃下げの禁止を法律で定めない限り、その利潤追求の為の賃下げを止めることは出来ないのである。
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