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パワハラの予備知識

 2012年度に労働局の個別労働紛争解決制度に寄せられた相談のうち、民事上の個別労働紛争(全相談件数25万4719件)の内訳では、【いじめ・嫌がらせ】(パワハラ)が前年度より12.5%増の5万1670件(全体の17.0%)で、【解雇】の5万1515件(全体の16.9%)を抜いてトップになりました。(3位は労働条件の引き下げ・4位は退職勧奨)

 このデータから、これからの個別労紛争働問題は解雇事案からパワハラ事案における戦術・戦略を 厚生労働省は2011年7月からパワーハラスメントの現状や解決策について、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ(WG)」で議論しており、そのWGがまとめた報告書で、「職場のパワーハラスメント」について以下のように定義しています。(2012年1月30日)

 「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」更に、パワーハラスメントに当たる6つの具体的な行為類型を提示しています。

1. 暴行・傷害(身体的な攻撃)
2. 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
3. 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
5. 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過少な要求)
6. 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
 パワハラが違法となるかの判断基準は、判例から人事権濫用の判断基準が適用されているようです。
1. 業務命令に業務上の必要性があるか
2. 業務命令が不当な動機・目的でなされていないか
3. 業務命令が労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を与えてはいないか

 これら3つの項目などを総合的に考慮され判断されるようです。

 厚生労働省では、これまで平成11年に定めた「心理負荷による精神障害等に係る業務上の判断指針」に基づいて労災認定を行っていましたが、より迅速な判断ができるように平成23年12月「心理的負荷による精神障害の認定基準」を新たに定めました。

 これにより今まで認定審査に平均8.6ヶ月を要していたのを、6ヶ月以内の決定を目指すとしています。

 精神障害の労災認定要件は、以下の3つを満たす必要があります。
1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
2. 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね約6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

 パワハラの責任追及
1.上司などのパワハラ加害者に対する責任追及の法的根拠
◇民法709条(不法行為による損害賠償)
◇民法710条(財産以外の損害賠償)
2.会社に対する責任追及の法的根拠◇民法715条(使用者責任)
◇安全配慮義務違反による民法415条(債務不履行による損害賠償)

 法律効果については、民法709条の不法行為で考えると、3年で時効となる可能性があります。しかし安全配慮義務違反による債務不履行で考える場合、時効は10年となる可能性があります。

 パワハラで闘うためにはパワハラ加害者である上司等や会社に対して、民法による損害賠償請求訴訟を提起することになります。

 裁判では、パワハラがうつ病等の精神障害の発症に密接な関係があるかどうかが問題となる可能性があります。ですから、うつ病等の精神障害は業務に起因していること証明するための証拠をとる必要があります。

 具体的には次のようなものがあげられます。
1.パワハラ行為の録音・録画
2.パワハラ行為の詳細なメモ(日時・場所・氏名・発言内容・行動など)
3.医師の診断書

 とにかく証拠をできるだけ多く揃え、具体的で一貫性がある主張ができるようにすることが大事だと思われます。

 平成16年のさいたま地裁での裁判の判決では、パワハラ加害者に対して、民法709条に基づき、いじめによって被った損害を賠償する不法行為責任があるとしています。

 また会社に対しては、雇用契約に基づいた信義則上、労務を提供する課程において、生命及び身体を危険から保護する安全配慮義務を尽くす債務を負担しているのにもかかわらず、いじめを防止する措置を採らなかったとし、安全配慮義務の債務不履行があったと認めました。
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