出向命令を行うには、以下の要件を満たす必要があります。
1. 労働契約上の根拠が必要
2. 出向命令権の行使が権利の濫用に当たらないこと
上記の権利濫用について調べてみますと…
出向命令が権利の濫用として無効となる場合については、労働契約法に定められています。
労働契約法14条
『使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。』
判例では、出向命令権の権利が濫用となるかどうかについては出向命令の、
1.業務上の必要性
2.出向者の労働条件及び生活上の不利益
この2つの点に関して比較衡量され判断されているようです。
具体的には権利濫用として無効となる場合の判断要素としては、以下のものがあげられています。
1. 業務上の必要性を欠く場合
2. 不当な動機・目的の有無
3. 労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合
4. 人選の合理性がない場合
5. 復帰が予定されていない場合
6. 出向に際しての適正な手続き及び説明を怠っている場合
実際に権利の濫用として無効となった代表的な裁判例をみてみますと…
平成元年の長野地裁の判決では、出向を命ずる根拠があっても、それは信義誠実の原則に従って行使されなければいけないとし、また出向命令は合理的で社会通念上相当なものでなければ、信義則違反ないし権利の濫用として無効となるとの考え方を示しています。
具体的には、業務上のミスの責任により、遠隔地での再教育を最長3年間も受けさせる合理的な理由が無く、更に、この出向命令は家庭生活上重大な支障を来たし、過酷なものであるにも拘らず、会社側はなんら配慮した形跡が無いと対応を批判しています。
そして、会社側の他の従業員の作業ミスの対応や出向事例の目的・人選の内容等を総合考慮すれば、判断するまでもないとして、労使関係の信義則に違反した不当な人事であると断言し、権利濫用で無効としています。
懲戒解雇についても、就業規則の解雇事由に該当せず、そのうえ懲戒手続においても著しく信義則に違反したものであり無効と判断しました。
景気が低迷している中、多くの企業が業績不振で人余り現象が深刻化しているのではないでしょうか。退職金を割増しして希望退職を実施できるほど余裕がある企業は少ないでしょう。そこでリストラ目的の出向が横行しているのではないかと思われます。
出向によって賃金がすぐに下がることはないでしょうが、業績不振の会社へ送り込まれたことにより、人事考課が下がり賞与が大幅に減額される可能性があります。
そしてあらゆる理由をこじつけて転籍となる可能性もあるかもしれません。そうなると更に給与体系の低い会社に追いやられるので、給料は大幅に減額されてしまいます。
リストラ目的の出向や転籍は、やる気を失わせ自主退職させることにあると思います。理不尽な出向命令を受けたと思ったら、それは完全にリストラの標的になっているはずです。
何の知識も無く、無防備ではリストラに対抗することができません。逸早くユニオンに相談し、雇用を守る指導を受ける必要があります。
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