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労働協約の様式性

 労働協約の効力のうち、その様式性についてについて検討してみます。労働組合法14条は、「労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生ずる」と規定しています。

 すなわち、労働協約とは労働組合と使用者との合意事項の書かれた書面であり、両当事者の署名または記名押印付きのものがそれにあたります。

 標題は「労働協約」であることに限られず、「覚書」でも「確認書」でも問題ないとされています。また、団体交渉の議事録、労使間の往復文書などにおいても両当事者の署名または記名押印があり、当事者の最終意思が確認されている場合は労働協約と認める判例もあるようです。

 ここまで範囲を広げることについて学説では反対意見もあるようですが、労働組合としては特に問題はないと思われます。

 現実の問題として実際には様式の欠けた労働協約も数多く存在するといわれています。長年にわたって両当事者間で特に問題なく認められているものの、いざしっかり検討すると労働協約の様式を満たしていないということで紛争になると問題が表面化することになります。

 一方、これまでよく問題になってきた論点は、労使間で合意はあったものの「書面そのものがない」場合の取り扱いです。この点について最高裁は厳格な立場をとっています。有名な判例なので少し詳しく紹介します。(最高裁第三小法廷平成13年3月12日都南自動車教習所事件)

 この判例に関する事実は要約すると次のようなものです。
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 会社にはA組合とB組合が存在していた。会社から新賃金体系の導入を伴うベースアップ(ベア)提案がなされた際、A組合はこれを認めて労働協約を締結しA組合員と非組合員にはベア分が支払われた。

 一方、B組合は「賃上げ額には同意したものの、新賃金体系に同意したわけではない」旨の「覚書」を添付したうえで労働協約を取り交わすよう会社に求めたが会社はこれを拒否し、協約は締結されなかった。会社は協約がないことを理由にB組合員にはベア分を支払わず、その後も協約は結ばれない状況が続いた。

 そこでB組合の組合員は4年にわたってベアの合意ができているのに支給されていない差額分を支払うよう裁判所に請求した。
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 一審、二審はベアについて労使間で合意しているのに支払わないことにつき労組法14条の書面がないことを理由とするのは「信義に反して許されない」として支払うよう求め、労働組合側を勝たせました。

 これに対し、最高裁は会社敗訴の部分を破棄差し戻しました。

 「書面に作成され、かつ両当事者の署名または記名押印しない限り、仮に、労働組合と使用者との間に労働条件その他に関する合意が成立したとしても、これに労働協約としての規範的効力を付与することはできない」と解すべき、とし、この点に関しては厳格な立場を取りました。(規範的効力=個々の労働組合員の労働契約が労働協約の内容に抵触する場合は労働協約の定める基準となる効力。ニュース153号=2013年8月1日「労働協約について」参照)

 その理由として「労働協約は複雑な交渉過程を経て団体交渉が最終的に妥結した事項につき締結されるのであり、口頭による合意または必要な様式を備えない書面による合意のままでは後日合意の有無及びその内容につき紛争が生じやすい……」ことを上げています。

 労働組合としては下級審の結論を支持したくなりますが、最高裁判例の傾向としてはこのような内容となっていますから、実務面ではこうした結論を考慮に入れつつ団体交渉に臨むべきかと考えます。

 この判例の事実関係に即して考えれば「覚書」の取り扱いについて組合内で知恵を出し合う中で最低限ベアの「実利」は確保し、労働協約は有効に締結しておくというような行動かと思われます。

 この最高裁の結論では労働協約が様式を欠く場合、労働協約の規範的効力はないとしていますが、お互いの合意としての内容(契約としての効力)までもを否定しているかどうかはわかりません。

 学説では契約内容をも明確に否定する見解、契約としての効力は認めようという見解が主な主張となり対立しています。したがって、裁判上では引き続き「両当事者間の意思を尊重すべき」旨を主張することも重要なことかと考えます。 

 いずれにせよ、労働協約は明確に「書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印する」という労働組合法14条の様式を満たしたものを作成しておくことが判例上からも要求されることになるでしょう。
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