政府の規制改革会議が限定正社員制度の普及を取り上げてから限定正社員制度を導入する企業が増えている。導入企業はすでに50%を超えていると言われている。規制改革会議の雇用ワーキング・グループ報告書を取りまとめた鶴光太郎(慶応大学教授)の主張を見るとその問題点が見えてくる。
鶴光太郎は無限定正社員(注・正社員のこと)が働き方に様々な問題引き起こしているとして、第一に企業が正社員採用に慎重になっている事を指摘している。第二に女性の労働参加、活躍を阻害していた事を指摘している。無限定正社員だと女性が専業主婦とならざるを得ないというのである。第三に「無限定」という特質がハラスメントと過労死、ブラック企業につながるという。第四に無限定正社員の場合「なんでも屋」になり転職を妨げる、と主張する。
我々から見ると鶴光太郎の主張は詭弁であり、ごまかしとしか思えない。資本主義では企業が新しい工場を建設する事が更新投資として必要になるのだが、この時に解雇可能の労働力にすれば、リストラ資金が不要になる、というのが経営側の経済的本音なのである。
鶴光太郎は「これまで正社員になれなかった人が正社員に転換出来るメリットを忘れてはいけない」と主張する。しかし我々が心配しているのは正社員を解雇可能の限定正社員に転換するのが狙いではないか?という点なのである。物事には二つの側面があり、法律を作るときはいつも耳触りのよい側面しか言わないのが御用学者の特徴なのである。
賃金の高い正社員だと主婦が働かないので、低賃金の限定正社員にすれば主婦も働かざるを得ないというのが鶴光太郎の言いたい事なのである。
解雇可能の「限定正社員制度」について鶴光太郎は言う「家族や生活を重視しながら、苦難があったとしても自分のプロとしての腕を信じ、組織にしがみつかず、自分の力で未来の働き方を実現していくのが限定正社員の生き方である。」と、大変ご立派な主張だが、そんな生き方が可能なのは特殊な技能を持った一握りの人だけである。
政府の規制改革会議の「有識者」とは鶴光太郎教授のように、ただ解雇できる労働力に切り替えて、リストラ資金を節約する目的を、あたかも高尚な目的・意義づけを語る詐欺師のような人物なのである。限定正社員制度の導入で非正規が正社員になれるかのように言うのは欺瞞でしかない。狙いは解雇自由な労働力への転換なのである。解雇自由な正社員とは非正規と何処が違うと言うのだろうか?
御用学者と言うのは詭弁の天才だ。あたかも限定正社員制度を導入すればハラスメントや過労死やブラック企業が無くなるかのように説明する。全くの嘘なのである。ハラスメントや過労死やブラック企業が示しているのは、企業の強欲な搾取の産物以外の何物でもないのである。限定正社員制度の導入の欺瞞的でさえある「素晴らしい意義」は、労働者の目にはすぐに嘘だと解るのである。
スポンサーサイト