小泉政権時代、郵政民営化ほど話題になりませんでしたが、同時に行われた政策に、国立大学の民営化があります(独法化)。独法化の目的は、硬直化し非効率化した人事や財政制度を見直す為とか、教員の教育・研究活動を活発にする為とか、大学組織の問題を改善する為でした。
しかし独法化は、大学組織の改善ではなく、様々な問題と歪みだけをもたらしました。とりわけ深刻なのは、大学研究室での研究不正とパワハラの横行です。が、これらの問題の本質を理解し、改善策を講じる動きは全くありません。
ここでは(1)独法化で取り入れられた方針と(2)大学教員の資質・能力の面から、研究不正とパワハラ問題の本質を考えてみたいと思います。
(1)独法化で取り入れられた方針:
研究不正とパワハラの主な原因は、下記の5つの方針にあると考えます。
①学長・理事への権限強化、
②教授の権限強化、
③教職員の契約社員化、契約社員のリストラ、
④任期制導入、
⑤競争導入
①と②は、トップダウン方式を徹底させるために導入されました。しかし結果は、教授レベルに都合のよい「改革」をするためで、教授の意に反するものを排除することが横行しています。
③と②は、人材の流動化をはかり組織を活性化させるために、導入されました。しかし結果は、上司が気に入らない部下を辞めさせるために、人材育成の責任から逃げるために用いられています。
⑤は、成果主義の導入で、研究者が切磋琢磨し科学技術が発展するというものでした。しかし、虚偽の結果で業績を稼ぐという、研究不正の温床になってしまいました。
①~⑤は、大学を運用する理事や学長、教授には都合のよいものです。何故なら、既得権をもった側の権限をふやし、既得権者のみが得をする組織・構造が作れるからです。しかし教員には、個人を尊重し、学問の自由や研究活動の発展とは間逆の、個人を萎縮させ、上意下達を徹底させ、個人が“考える”ことを否定する環境を作りました。
独法化は、大学に、研究不正やパワハラが温存される構造を作ってしまいました。
(2)大学教員や教授の資質・能力
もともと大学教員は、大学卒業後も研究室しか知らない人達です。自分の研究にしか興味がなく、研究室という狭い世界しか知らず、一般社会や常識を知る機会もない。
教授クラスは人格者で、時には有識者と呼ばれるのだから、人間的にも出来ている、というのは一般人の妄想です。教授らの多くは、官公庁や企業、工場が気にする就業環境や安全配慮義務という概念もなければ、労働基準監督署の存在すら知らない非常識な人達といっても過言ではありません。
そして出世欲、権威欲が異常に強い人間が、教授には多いのです。“自分はえらい”“偉い自分の言う事を、他人がきくのは当然”“他人がやるのは当たり前”という感覚です。
教授の権限強化を背景に、大学研究室で、教授らによるハラスメントが多発するのは、当たり前です(威張ることに、お墨付きがついたのですから)。
教授レベルの人達のモラル・規範意識・人権意識は非常に低く、データの捏造・改ざんを行ったり、下位の者に不正行為を強要したり、研究費の使用ルールを守らない、気に入らない者には怒鳴る・実験妨害をする・風説流布をする等々、違法性の疑いがある行為を行います。
しかし“自分は教授で偉いのだ”と思い込んでいるので、何が問題なのかわからず、自分が良ければそれでいいので、対応のしようがないのです。
このような教授らには、学生を教育し、研究を進める能力はありません。その能力の低さを隠すために、ハラスメント行為を繰り返す。悪循環です。
そして大学も、研究不正やハラスメント問題が発覚しても、事態を把握し、事実を認定し、問題の解決を諮ることはありません。教授や理事、大学の保身のために、被害者を問題児とし放逐することで、問題を解決したことにします。
大学は、被害者が泣き寝入りすることを見計らった対応をとります。悪質です。
大学でパワハラと研究不正が多い理由は、独法化がもたらした“構造上”の歪みと、大学教授クラスの資質と能力の低さです。これらの問題の解決には、まず、独法化でもたらされた①~⑤の方針を撤回し、個々の大学教員が自由に教育や研究を行える環境を整えることだと思います。
独法化後、多大な税金を投入されても、日本の大学からの学術論文の発表数は減少し、研究の質も量も低下し、研究活動は停滞しています。この結果からも、①~⑤の方針は撤回すべきです。
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