1)2009年度の世界情勢の激変の第一は、昨年秋のアメリカのサブプライム債権の崩壊が、全世界を同時不況に追い込み、アメリカ大統領に史上初の黒人大統領のオバマが登場したことである。オバマの登場はアメリカの単独行動主義の「戦争」から多国間協調の「和平」への転換を意味していた。
世界同時不況の下で主要国が自国経済の再建に取り組むことになった。
全世界の労働者が世界同時不況の中で失業と賃下げの大波に翻弄されることになり、労働組合の重要性が広く認識されることとなった。
また地球環境問題が、温暖化と気候変動の激変の下で一層重要な課題として認識されるようになった。
深刻な信用の崩壊による金融危機は世界中の人々に資本主義がもはや最良の制度ではないことを強く認識させるとともに、マネーゲームを煽る金融機関の高いボーナス規制や、投機の社会的規制の必要性を認識させている。
オバマ大統領の国連重視・多国間協調外交による、イスラム原理主義以外の全ての勢力との協調は、アメリカの力の衰退の反映なのである。
世界の首脳会議はG8からG20へと変わった。中国やインド、ブラジル等の台頭によって世界は一気に多極化の時代を迎えた。
多極化とは「合従連衡」の外交の時代であり、いかに世界から孤立せず、同盟関係を築けるかが焦点となる時代なのである。
世界のかつての二大超大国のうち、ソ連は崩壊し、アメリカは急速に超大国としての力を失いつつある。注目されるのは世界経済が「回復」を言われているのに、全世界で失業者が増え続けており、「二番底」といわれる景気の悪化の可能性が強まっていることである。
結局、各国の巨額の公的資金の注入は、景気回復にはつながらず大恐慌を先送りしただけという結果すら懸念される。世界的な金融危機は今も続いていることを認識しておくべきである。
2)世界情勢の激変は、国内政治の情勢の変化につながった。09年度夏の総選挙では国民の強い支持の下で「官僚政治からの転換」「国民の生活が第一」「コンクリートから人へ」を掲げる民主党が圧勝し、新しい連立政権が誕生した。
新政権は今のところ「官僚政治からの転換」を目指して努力しており、明治維新とGHQの戦後改革に匹敵する第三の改革が現在進んでいる。
民主党を中心とするこの改革が単に利権の再分配で終わるのではなく、日本の新たな産業構造への転換と官僚支配からの転換につながるかが焦点である。新世紀ユニオンは、よりましな政府の視点から民主党を支持して、日本の新たな民主化に貢献した。
日本の国内政治の局面は、反動的既得権益集団である自民・財界・官僚の旧勢力の巻返しと抵抗と反撃が始まり、広範な人々がそれにもかかわらず鳩山政権を支持し、強い期待を持って支持しているのが特徴である。
官僚と財界の力があまりにも強大なので、新政権が挫折せぬよう労働者・人民が新政権の改革を支持することが重要である。
新政権への期待は、自公の対米追随一辺倒から、対米自立の主体性のある外交を展開できるかという点も注目される。
日本はアメリカ一辺倒の外交から、経済成長著しいアジア中心の自主・平和外交へ転換しなければならない。
日本は国内経済を輸出中心・土木資本主義から、環境・バイオ・福祉重視の活力ある内需を生み出す成長戦略が重要である。
我々は新連立政権の改革が尻すぼみにならぬよう、また利権の再配分で終わり、民主が第二の自民にならぬよう監視しつつ、民衆のための改革が成果につながるよう支持していく必要がある。
(3) 内外情勢の激変は、新世紀ユニオンの活動に大きな影響を与えた。無料労働相談は前年度の2倍近い数字となっている。
世界同時不況の長期化が日本の労働者に個人加入労組(ユニオン)の必要性を認識させることになった。特に本年1月から4月の間はHPへのアクセス数も急伸し、相談の内容もハラスメント、退職強要、解雇が急増した。
労働者の平均賃金はこの数年間で年間100万円以上低下することとなった。組合員の生活もそれぞれに困難に直面している。
組合費の支払い不能も増えている。拠出金の踏み倒しが新世紀ユニオンの財政を直撃した1年となった。
リストラが多発している最中の財政危機は、ユニオンの宣伝費の欠乏となり、組織戦略上の重大なマイナス要因となった。
中でも組合員N(女性)は和解金710万円の解決金を得たのに、ユニオンの規約で定められた拠出金と組合費を支払わず逃亡した。(現在大阪地裁で訴訟中)
現在も専従役員は無給であり、ユニオンの諸活動は財政上の深刻な制約を受けている。
9月末の口頭弁論で裁判官は「組合とはPTAのようなものであり、弁護士のようにお金を払って対価を得るという商売でやっているのではない」「弁護士を頼めば40万から50万円いる、ユニオンにお金を払ったらどうか?」と被告のNに拠出金と組合費の支払いを促したが、Nは支払いを拒否した。
組合員としてユニオンに加入し(団結し)その結果710万円の和解金を得ながら逃亡するのは、規約を無視した詐欺的行為であり、許すわけにはいかない。このようなことを許せば全国のユニオンが組織を維持できなくなるだろう。
ユニオンは仲間との結束(規約)を守ることで団結し、ともに闘いを支持しあっている。仲間との結束は守らなければならず、拠出金を踏み倒す行為は、もっとも恥知らずな階級的裏切りである。
我々は、こうした裏切りについては規約に基づき踏み倒しの事実と住所・氏名を公表する予定である。
新世紀ユニオンは本来なら今年は飛躍の年であったが財政面の危機によって宣伝費をゼロとしなければならなかったため拡大が十分に進まず、結成以来最大の危機に直面することとなった。現在新世紀ユニオンは借入金でやりくりしている。
したがって前年度からの課題であったホームページの改善も依然達成できていないことは残念なことである。
本年度は「リストラ対処法」「新入組合員読本」に続き「労働組合のABC」のパンフレットを作成したことは大きな成果である。
労働組合としての質を高める上でパンフの活用を訴えたい。
新世紀ユニオンの組合員の多くは、解雇やハラスメントや退職強要などの問題をそれぞれが持っており、問題解決のために闘っている。各組合員は職場での闘いを、正反両面から中間総括し、教訓を導き出して、失敗を後の戒めとし、闘いの中で自己を練磨し、高めていかねばならない。
夜明けのこない夜はなく、克服できない困難はない、重要なのは量的蓄積を重ねることであり、それが質的激変につながるのである。
「もめごとは極まれば反転する」のであり、新世紀ユニオンの組合員は互いに教訓を学びあって、局面を好転させ勝利を勝ち取らねばならない。
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