「ブラック企業」という言葉が広く知れ渡り、「パワハラ」や「名ばかり管理職」など、労働をめぐる問題が次々と報じられている。そんな中、なぜそんなことがまかり通るのか、労働者の権利がきちんと守られていないのは政治や行政の怠慢ではないのか!と誰もが思ったことがあるだろう。
確かに、権利は守られなければならない。けれども、黙っていても投票案内が来る選挙権と、労働者の権利は全く種類が違うものなのだ。
そして、しばしば取り締まりを行っていて、見つかったら罰金を取られる交通違反のように労働における違反が取り締まられているわけではない。では労働者の権利とは一体何なのか、どのように保障されているものなのか?この本ではそれを分りやすく解き明かしている。
労働とは「契約」に基づいて行われているものなのだが、日本の社会は欧米のように契約の概念で動いてはいない。そのため契約によって定められる権利まで曖昧になってしまっている。
企業と社員が、契約の範囲を越えたウエットな関係でつながるため、労働組合もたいてい企業別である。企業を離れた個人は無力なため、ますます企業に依存する。そしてそれをいいことに、企業はますます違法行為をやるようになる。それが日本型雇用の負の側面となっている。
しかし労働者の疲弊は、長期的に見れば回り回って企業や国家の存続を危うくすることになる。これをどう変えていけば良いのか、そして本来あるはずの権利をどう守り、行使すればよいのか。
労働者の立場は弱く、あるはずの権利の行使も容易ではない。権利を守り、行使するために、法律では団結して闘う権利を保障している。団結して声を上げ、正しい闘い方で向き合う意外に、権利を守り、行使することはできない、それが真実なのだ。
ともすれば、私たちはあまりにもこのことに無知である。そのことがこの社会を生きにくいものにしている原因の一つではないだろうか。
労働に関する権利がどのように形作られていて、守るにはどうすれば良いのか、それを知らなければ正しい対処もできない。
労働の現場で自分の権利が侵されたと感じ、問題意識を持つ人ならば、労働相談をする前に、まずはこの本を読んで学んでおく必要があるだろう。
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