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労働者であれば誰でも利用できる労働審判

 労働審判で審理される内容は、解雇や残業代請求、退職金、未払い賃金、雇い止め、労働条件の変更、配転・出向、パワハラ等がありますが、労働者が何よりも絶対的に考えなければいけない事は使用者と争う内容に関する証拠集めです。

 証拠を豊富に集めることができれば、その使い方として民事訴訟の労働裁判では戦術の一つとして、被告側に嘘の主張をさせるだけさせて、最後に原告側が被告側の主張が嘘であることがわかる決定的な証拠を出す、というやり方がありますが、労働審判では原則として3回以内の期日で審理を迅速に処理する制度なので、この方法はできません。

 労働審判では最初の期日までに全ての証拠及び主張をだしてしまいます。そしてその後は期日において口頭で主張・反論していくことになります。即ち、最初に提出する『充実した証拠とそれに基づいた断固とした主張』が審判官・審判員の心証に大きく影響し、勝敗が決まると言っても過言ではありません。

 ですから有利な心証を得るには、決定的な証拠も手元に残さず、全ての証拠を最初に提出する必要があります。何れにしても、証拠が沢山あれば有利に闘う事ができるでしょう。ではどんなものが証拠になるのでしょうか。

 例えば、サービス残業代を請求するのであれば時間外まで働いていた事がわかるようなものを集めなければいけません。一番良いのは、労働時間を正確に記録したタイムカードです。しかしサービス残業を強いる様なブラック会社では絶対的な証拠となるタイムカードが無い場合が多いのではないでしょうか。

 或は、タイムカードがあったとしても定時になると会社が押してしまったり、従業員に押させるようにしてしまって、意味の無いものになっている場合もあるでしょう。(この場合、ICレコーダーを使って上司にタイムカードの説明を聞いて録音しておけば証拠になると思われます)

 絶対的な証拠となるタイムカードが手に入らなくても、裁判では時間外まで働いていた事を立証する責任は労働者側にあります。ですから、できるだけ多くのタイムカード以外の証拠を集めて、しかも各証拠同士が時間外まで働いていた事に関して連動している様に示す必要があります。そのためには先ず必要最低限の証拠が揃っているか確認しておかなければいけません。それは、「雇用(労働)契約書・就業規則・給与明細」です。

 これらによって労働者が実際にその会社で働いていたことを証明したり、その会社の規則がどうなっているのか確認したり、毎月の残業代の支払いがどうなっていたのか等を確認できます。これら3点を確保した後、サービス残業をした証拠集めをしていきますが、何を集めたらいいのか分かりにくいと思います。

 そこでどんなものが証拠となるのか少し調べてみました。
●詳細な業務日記・メモ
(これは労働時間だけではなく、自分の仕事を主体にして、取引先とのやり取りや上司・同僚・部下との報告・連絡・相談、気になる社内での出来事等をできるだけ5W1H形式で記入したもの)
●業務シフト表があれば記録しておく
●パソコンを使う業務であれば、毎日のログイン・ログアウトの記録
●サービス残業を終えた時、会社の電話を使って自宅や家族の携帯に「帰るコール」をかけ、その着信履歴を残しておく
●サービス残業を終えた時、会社のパソコンから自宅へ「帰るメール」を送信しておく
又はサービス残業を終えた時、職場内の時計を自分の携帯で写真に撮り、その写真を会社のパソコンに送信し、更にそれを仕事終了の「帰るメール」として自宅のパソコンに送信しておく
●通勤定期の利用履歴を残しておく
●サービス残業中の業務メールやファックスの送信履歴を残しておく
●会社へ提出する業務日報等(できれば終了時刻が印字されるものがよい)を、コピー又は写真に撮っておく
●サービス残業を終えて帰宅する際、上司や同僚がいる時は挨拶をして帰る様にして、それを録音・録画しておくまた上司や同僚がいない場合は仕事終了の報告をメールで送信しておく

●サービス残業を終えて帰る際、守衛や警備員がいる時は挨拶をして帰る様にして、それを録音・録画しておくまた警備システムの入退室の記録をもらう様にする
●サービス残業中に近くのコンビニ等で夜食を買いに行った場合はそのレシートを残しておく
●自分の携帯端末のGPS機能を使って、終了時刻に会社の場所にいた事を記録しておく

 ざっと調べてみただけで以上の項目がでてきましたが、大事なことはこれらの一つだけを証拠として集めるのではなく、複数の項目の証拠を集めて、時間外まで働いていた事を複合的に証明することだと思います。

 即ち、サービス残業の終了時間を特定する上で、それぞれの証拠が連動して一貫性のあるものになっていれば、信憑性の高いものになるのではないかと思うのです。実際にこれらの証拠を集めれば、サービス残業の終了時間の推定に役立つと思います。

 具体的にみてみますと、仮にサービス残業の終了時間を『職場内の時計』が示す時刻を基準としますと…
【職場の時計を自分の携帯で撮影した時間】
【職場の時計の写真を会社のパソコンへ送信した時間とパソコンが受信した時間】
【会社のパソコンから自宅のパソコンへ「帰るメール」を送信した時間と受信した時間】
【会社の電話を使っての「帰るコール」の自宅の電話又は家族の携帯の着信時間】
【会社のパソコンの電源を切った時間の記録】
【GPSの存在場所の記録時間】
【上司や同僚へ仕事終了の報告メールの送信時間】
【業務日報や業務報告書の終了時間】
【詳細な業務日記・メモへ記入する終了時間】
【警備システムでの退社時間】
【通勤定期の帰りの利用履歴の時間】

 これらの証拠が示す時間は、サービス残業の終了時刻と仮定した職場の時計の時刻と近似又は連動しています。これによりサービス残業終了推定時刻を立証できる可能性が高くなったのではないでしょうか。

 絶対的な証拠となるタイムカードが手に入らない、或は正しい労働時間を記録していない物であるなら、時間外の労働時間を特定するために複数の証拠集めをし、それらをまとめて強力な証拠にするという考え方が大事なのだと思います。

 このようなサービス残業代請求等の個別労使紛争を迅速・適正・実効的に解決するには、裁判所での労働審判制度を利用するのが良いと思います。
この制度はパートやアルバイトの方も利用できます。

 労働審判は通常の裁判に訴えた場合の手続き・費用・時間等の面と比べて負担が軽減されており、殆どの案件で3回以内の期日で個別労使紛争を調停により解決しています。しかも、弁護士の先生に依頼しなくても本人だけによる申し立てで審判ができるので費用負担が相当軽減されます。これにより収入の少ないパートやアルバイトの方でも泣き寝入りしないで闘う方が増えてきたようです。

 パートやアルバイトの方で、もし働いている会社で何か不利益な扱いを受けていると感じていたら、その事に関して経営者や幹部社員に直接問い質すのは早計です。それは、労働者個人で経営者に不利益な扱いに対して噛みついても、力関係では会社側の方が圧倒的に有利なので握り潰されてしまうからです。

 しかも使用者と労働者との対立が表面化する可能性が高くなり、もし対立が表面化してしまうと、その後に個別労使紛争となって闘う決意をしたとしても、肝心の証拠集めが会社側にマークされてしまって思うようにできなくなってしまいます。この様にならないためには、憲法で保障されているユニオンに早い段階から相談し、団結する事が重要です。

 そうしておけば、問題が起きても会社側と対等に交渉ができ、労働者としての権利を主張できる様になります。とにかく、職場で疑問に感じていることがあれば直ぐにユニオンに相談した方がいいと思います。相談する事によって、不利益な扱いが労働法に違反しているかどうかがわかります。

 もし労働法に違反しているのであれば、労働審判で闘うことが可能です。ユニオンには、労働者が闘う決意をすれば全面的にバックアップする用意があります。闘うために絶対に必要な証拠集めの指導や審判での主張・反論のやり方についてもきちんとした助言が得られます。それにより、審判で有利な調停にもっていくことができるはずです。

 その一方、収入が少ないパートやアルバイトで働いている方々の考え方として、「働いてみて不利益な扱いをする様な変な会社ならサッサと見切りをつけて新たなとこ探して働いたらええやん!」っていう声が聞こえてきますが、これはこれで余計な事に神経や労力を使わない様にする有効な選択肢の1つだと思います。しかしこの考え方に対しては、もしこれから新たに働く先々でも不利益な扱いを受け続けたとしたらどう思うでしょうか。

 仮にあなた一人が不利益な扱いを我慢できたとしても、あなたが見切りをつけた会社では、新たに入社したあなたと同じように働いている労働者の方が不利益を受けている事になります。これでは、労働法違反の会社は利得しながら何の罰則も受けず、ほくそ笑んでいることでしょう。

 こんな状態が続けば、ブラック会社が増殖するのは当然ではないでしょうか。そしてその結果、労働環境は悪化する一方ということになってしまいます。パートやアルバイトで働いている先々で不利益・不当な扱いを受け続けているのなら、何れどの時点かで怒りを持って闘うべきではないでしょうか。使用者の労働法違反は労働者が訴えない限り制裁を受けさせる事ができないのです。

 闘うということは、労働者一人の問題だけではありません。少し考えれば、同じように働く労働者全体の問題でもあることに気付くはずです。それに気付けば、闘うことの意義の重要性が理解できると思います。せっかく労働審判という新たな制度ができたのですから、これを利用しない手はありません。

 闘うことにより、ユニオンの方々から色んな事を教わるでしょうし、また色んな事を学びとるに違いありませんそうして得たものは、今後においても大いに役立つのではないかと思います。


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コメント
労働審判に臨む
ともすれば、自分ひとりで閉じこもりそうになるが、会合に出席し、事案は少しずつ違ってもブラック会社に勤務され同じような憂き目に遭われた方のお話を伺い、とても励まされ勇気をもらいました。申請書作成にあたり、過去の嫌なことを思い出したり苦しいこともありますが、これを乗り越えていかなければと、鼓舞しています。理不尽なことに負けない強さを持ち続けなければ、自分自身にと言い聞かせています。
2014/10/26(日) 11:55 | URL | ブラック企業撲滅一員 #-[ 編集]
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