新聞報道によると厚生労働省が8月18日にまとめた6月の毎月勤労統計調査によると、基本給にあたる所定内給与は前年同月比0.2%増の24万2830円となり2年3カ月ぶりに増加に転じた。しかし物価は賃金を上回るペースで上がっている。
現金給与総額を消費者物価指数で割った実質賃金指数は賃上げが行われた今年4月がマイナス3.4%5月がマイナス3.8%6月もマイナス3.8%となっている。つまり賃上げが行われたと言ってもそれは消費税増税や、物価の上昇には及ばなかったことを示している。
この結果勤労者所帯の今年6月の実収入は前年同月比1万8303円減少し、これに物価上昇を考慮に入れた実質で6.6%の大幅減少(総務省発表の6月の家計調査)となっている。これから税金や社会保険料を除き、家計が自由に使えるお金=可処分所得では実質8%の減少となっている。これを反映し今年6月の消費支出は93.9%と落ち込んだ。
政府はこうした状況を受けて10月から最低賃金を引き上げることにしているが、時給が16円上がったところでインフレ傾向の下では実質賃金の上昇にはつながらないことは明らかである。
つまり我々が以前から明らかにしてきたように、日本のデフレ傾向は変わらず、むしろデフレ下の物価上昇になり、労働者の絶対的貧困化が深刻化しているのである。日本経済の縮小再生産を克服するには大幅賃上げが必要なのである。
政府は来年消費税率を10%に上げるというのだから労働者の生活は悪化するばかりである。安倍政権は一方で消費税を上げ、他方で法人税を大減税するというのだから、自民党の大企業中心の政治は労働者人民の貧困化を促す酷いものである。彼らには国民経済を活性化するという発想がそもそも無いのである。
特定の裕福な階級だけが巧い汁を吸う政治では、個人消費は縮小を続け、結果として国民経済は衰退していくことになる。労働者に配分する労働分配率が傾向的に低下しており、富の分配が一方の支配的階級に有利に傾けば、国民経済が傾向的に疲弊する悪循環になるよい例である。
賃上げが少なすぎるという意味で、労組の家畜化が国民経済に及ぼした害毒であると同時に、アベノミクスによる円安が招いた災厄と言えなくもない。強欲の資本主義を止めて、富の再分配を強化し、働く者の生活が大幅賃上げで改善していくようにしなければ、国民経済は一層疲弊していくことになる。
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