民事訴訟では、裁判に提出する証拠はどんなものでもよく、その証拠の評価及び証拠から類推される事実は裁判官の自由な判断に委ねることになっています。しかし自由な判断といっても、裁判官の恣意的なものではなく、論理法則や経験則に基づいた合理的な判断をしなければいけないことになっています。
即ち、裁判官の頭の中は最初は真っ白な白紙の状態でスタートし、訴状・答弁書・準備書面・書証・尋問から徐々に争点を絞り、そこから導き出される争いのある事実を探りだし、そこに違法性があるかどうかを最終的に判断しているのだと思います。では労働裁判で原告が主張する事実を認めてもらうにはどうしたらいいのでしょうか。
やはりそれには裁判を闘う上での戦略・戦術が必要だと思います。しかしそのような知識等は労働者が持っているはずがありません。その役割をするのはユニオンだと思います。ユニオンには今までに裁判で闘い続けて培ってきた知識・経験・実績等あり、そこから得られたノウハウが蓄積されており、また労働者を取り巻く環境の変化に合わせた戦術・戦略を専門的に研究しているはずです。ですから労働者はユニオンに相談すべきなのです。
一人では弱い立場で何もできない労働者でも、憲法で保障されているユニオンに団結することによりその保護を受けられ、労働者としての権利を主張できるのです。個別労働紛争に巻き込まれてしまった労働者は直ちにユニオンに相談する必要があります。できれば巻き込まれる前からユニオンに相談するべきだと思います。
それは個別労働紛争が拗れて裁判に訴えて闘うことになった時、何よりも重要なのは証拠を確保しているかどうかということであり、それで勝敗が左右してしまうからです。ですから労働者が何よりも考えなければいけない事は証拠集めだと思います。証拠は何でもよいのですが、実際はユニオンとの相談・指導のもとで証拠をとっていく必要があります。
それは裁判で闘うということは、紛争を法的権利で捉え、法的な争いとなるためです。そのためには違法性がわかる証拠・被告側の主張が矛盾している事を示す証拠等を専門的指導の下で集める必要があるからです。その証拠集めも、会社側との対立が表面化してしまうと、常に監視役がつき、行動を注視されてしまう様になり、大変難しくなります。
できるだけ早くユニオンに相談し、的確な指導による証拠集めに専念しなければいけません。証拠が十分に集まれば、裁判官の心証に強い影響を与えるはずです。裁判における戦術・戦略はユニオンが主体となって原告と話し合いをして進めていけば裁判で不利な結果にはならないと思います。
最終的には、(原告となる労働者の証拠集め)+(ユニオンの戦術・戦略)+(労働問題専門の弁護士の先生)=裁判の勝利となるのではないかと思います。もし証拠集めが不十分だと、裁判官の心証を悪くし、原告が主張する事実が認められなくなる可能性が高くなるでしょう。
例えば、原告がパワハラで労災が認定されている事を証拠として提出しても、他の証拠が不十分なために裁判を進めていく上での戦略・戦術がとれず、裁判官に原告が主張する事実を認めてもらえず、結局のところ労災認定はこの事件とは別の事実から認定されたものと判断され、無かった事にされてしまうかもしれないということです。
労働者が裁判を考えるのであれば、裁判官の心証を左右する証拠集めが絶体的条件であり、『証拠が無ければ闘えない・泣き寝入りするしかない』という事を痛感しなければいけません。証拠を集める際、職場に仲間がいれば心強いのですが、あまり親しくしていない仲間の場合は気をつけた方がいいかもしれません。
労働者が自分の身を守るためには、信頼度に少しでも不安がある仲間に頼るのは大変危険だと思います。証拠集めは他人をあてにせずに独自で工夫して確実にとれる様にしておく必要があります。また時間がある時に労働法等を調べておいた方がいいかもしれません。
実際問題、労働法を少しでも知っているのと知らないのでは大きな違いがあるはずです。法律を勉強するのは大変困難なことですが、表面的或は軽度に調べておく様にするだけで思考範囲が広がり、証拠集めにも参考になると思います。
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