リストラの手法として出向が持ちいられるようになって長いですが、未だに多く使われています。下請けや関連企業に余剰人員を引き受けさせる訳ですが、最近は出向から転籍になし崩しに変える手口もありますから、出向を内示された時の対応が重要となります。
10数年前に作成した新世紀ユニオンの「リストラ対処法」の出向対策では本人同意が必要なのではっきり断ることを書いてあります。しかし現在では労働契約書や就業規則で出向の応諾義務を明記している例がほとんどで、就業規則や出向規程で、期間や労働条件が同一であることなどが明記されている場合、当然対応も変化して来るので注意してください。
一般的に言う出向は「在籍出向」のことで、元の勤務する会社に雇用契約上の地位を保持したまま、他の会社に相当の期間にわたり就労することを言います。この出向を命令するには(1)労働契約上の根拠が必要であり、就業規則に一般的に「出向を命じうる」という規程だけでは足りません。出向は労務を提供する相手が変わるので(2)出向先での基本的労働条件が明確になっていることが必要です。
判例では今も、出向には労働者の個別合意が必要とされています、しかし出向命令権が労働契約の内容になっている場合が増え、その為上記2点がカギとなります。
ゆえに出向を打診されたら契約上の根拠・出向の期間(=普通3年)、仕事の内容、賃金、勤続の継続、転籍に変わることのないこと等を確認し、書面で貰うようにして下さい。労働条件が大幅に悪化し、出向を受け入れることが著しく不利益となる場合は拒否してもかまいません。出向についても権利濫用法理にある制限が及ぶので退職に追い込む為の出向である場合は断固拒否すべきです。
しかし会社が赤字であり、当該出向が解雇回避義務を履行するための出向である場合、拒否すると整理解雇が来る場合があるので注意が必要です。つまり出向が内示された段階で、その出向の経営上の目的・狙いを見極めることが重要だということです。
出向に協力すると、その人は元の企業に返ってもすぐにはリストラの対象には出来ません。すでに会社のリストラに協力したのですから、次のリストラの対象には出来ません。リストラには対象選出の合理的基準が必要ですので、特定の人だけを連続的「狙い撃ち」にはできないのです。
実際にリストラの標的にされてきた人が出向を受け入れ、3年経って帰ると再びリストラの対象にされた人事で、「リストラの合理的選任基準」の明示を求めたところ、会社はリストラを撤回し、人事担当者の方が解雇になった事例があります。
この事案の場合出向を拒否していたら解雇になっていたと思われ、それを警戒して柔軟に出向を受け入れたことが幸いし、雇用を守ることができました。出向を受け入れる時は必ず期間と労働条件を書面ではっきりさせるようにして下さい。
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