安倍政権の産業競争力会議などで進められていた解雇ルールの見直しに反発が強まって、解雇規制の緩和については成長戦略に入らなくなった。解雇ルールの見直しを主張する経済人は「日本は解雇規制が厳しすぎて、衰退産業から成長産業への労働力に動が進まない」「適材適所の人材配置が必要」というものだ。
しかし労働者側から見ると、大企業でも「追い出し部屋」に放り込み、リストラをしたい放題にやっているし、中小企業では解雇自由であるかのように、退職強要などのほか、事実上の解雇がたくさんやられている。一度失業すると現在では非正規の仕事しかない状況は、企業が正規労働者をリストラし、非正規に入れ替えている結果である。
OECD(経済協力開発機構)の調査では雇用保護規制の強さでは、日本は30カ国中23位で規制は弱い方に入るのである。ただ年功序列のせいで高齢になると賃金が高く、転職すると賃金が下がるので転職しょうとする動きが弱いのは事実である。アメリカでは転職する度に賃金は上がるが、日本ではそうはならないので労働力が流動化しないのである。
正社員で賃金が世間並みに有れば労働力移動などいくらでも進むのである。つまり「日本は解雇規制が厳しすぎて、衰退産業から成長産業への労働力移動が進まない」という論は詭弁に近いごまかしと言えるのである。
そこで解雇自由化に変えて出てきたのが「限定正社員制度」というものであり、これは正社員よりは賃金は低いが社会保険はある、しかし職務がリストラで廃止されれば雇用関係は終わる。つまり解雇自由の2級正社員である。また日本では裁判で負けると現職復帰しか選択肢が無いが、一定額のお金を払えば雇用関係を解消できる制度を入れようという動きが出ている。
こうして解雇の自由化が成長戦略に入らなくなったことを受けてOECDは、1月19日日本の雇用政策について調査報告書を発表した。報道によると報告は、衰退産業から成長産業への労動移動を促す為、労動移動の政策転換を継続すべきとし、中堅層の労働者が転職や再就職をする際に活用できる技能を書面で示す仕組みの整備を求めた。つまり解雇の自由の政策はまだ生きているのである。
経済界には、解雇を原則自由にするよう労動契約法を「改正」することや、再就職支援金を支払うことでいつでも解雇できるルール作りを求めており、「労動移動型ルールの転換」を主張している。転職すれば賃金がアップするなら現状でも日本で労動力移動が活発化するのである。ところが日本では転職すると非正規で賃金が半分になるから誰も転職しないのである。賃金を上げずに解雇しようとするところに無理があると言える。
従って我々は、解雇の自由化に引き続き反対していかねばならないのである。
スポンサーサイト