私は関西の機械メーカーに勤めています。私の会社では、以前から仕事に必要な道具を社員が自腹で購入することが多いのですが、今では高価な工具も社員に払わせるようになってきました。
通常、機器の製造に必要な設備や工具は会社が購入し、それを社員に支給・貸与します。ですが、会社が購入する工具は最安価な物です。作業効率を求める作業者は、質の良い便利な道具を自腹で購入してきました。
支給されるスパナ(\700)※では、工作物の形状上、ボルトの締め付けが困難なため、より便利なフレキシブルギヤレンチ(\4,500)を各自が購入して使用しています。会社としては、「社員が工具を購入しているのは趣味の範囲なので代金の請求には応じない」としています。
道具の質は品質に大きく影響します。(一流のアスリートが用具にもお金をかけるのと同様です。)会社支給の工具で仕事をしていては、良い工具を使用している同僚に遅れをとります。私もやむなく工具に投資せざるをえません。私は請負の個人事業主ではなく、基本給20万円程度の社員ですので、税金・職場の組合費・社宅の家賃等を引かれた手取から工具費を捻出するのは大変です。
さて、近年こうした状況がさらに悪化してきました。会社のコスト削減活動により、高額な工具が故障しても修理・買い替えはされません。工具が足り無くては製造が追い付かず、納期に間に合いません。
間に合わないと、顧客と直に接する製造現場の社員が顧客より多大な叱責を受け、責任を取らされます。工具購入の決定権を持つ責任者は何の責任も取りません。こうして、高額な工具でもやむなく自腹で購入せざるをえなくなっています。
インパクトドライバー(\60,000)、レーザー墨出機(\60,000)、溶接機(\165,000)等はほんの一例ですが、これらはボーナスで買わざるをえません。社員は仕事に必要な工具の購入を強制されたことはありません。あくまで「自発的」に自腹を切っています。
会議の場で社員が「○○を欲しいのですが」と発言しても、管理職は高圧的な態度で「○○を購入頂きたいのですが、検討お願いします。と言え」と怒るだけで、購入はしません。また、「責任感を持て。問題が起きても環境や会社のせいにせず、自分の問題として捉えよ。会社のせいにするような奴は、客からも会社からも信用を失うぞ。」と教育(脅迫?洗脳?)します。
管理職は、会社保有の工具につて、数・種類・使用者・使用場所は全く把握していません。管理の手間と工具代を削減でき、一石二鳥であるとでも考えているのでしょう。経費を削減し、高評価を得ることができます。この管理職は活発な購買費削減をたたえられ、独り昇格した。
このような現場を犠牲にした杜撰な管理を続けているせいか、労働災害は頻繁に起こっています。労働災害が発生すれば、現場の社員だけでなく、管理職にもようやく責任が問われます。再発防止策として、ようやく対策品が購入されることもありました。数年前には、経費で業務用扇風機(\6,000)が購入されました。これも以前は社員が自腹で購入していたものです。
その後も熱中症による労働災害が発生したときは、空調服(\20,000)を全員に支給する案が検討されましたが、費用をどの部門が負担するかで対立し、競合他社や下請会社が導入を進める中、私の会社では導入が見送られました。その結果、今夏も社員が熱中症を発症しています。
郵便局ではアルバイトでも年賀はがきやギフトを自腹で購入しているそうですが、労働者に事業で必要な経費を負担させるブラック企業の手口が今後増加しないか憂慮します。労働者は自腹しないことで受けるパワハラと闘う覚悟が必要です。
※価格は参考の概算価格であり、実際には店頭やネット通販で安価なものを探して購入します。
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