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解雇の金銭解決がもたらす戦後労働法制の破壊!

 甘利経済財政・再生相は8月14日の閣議に2015年度の年次経済財政報告(=経済財政白書)を提出した。今回の経済財政白書で注目されるのは、初めて「失業なき労働移動の促進が重要」との認識を打ち出したことである。

 白書は「失業なき労働移動」政策は人を需要のある分野へ移すことで経済成長を促す、として3つの点を答申していることである。第1は再就職のための従業員の能力開発を支援する企業への「労働移動支援助成金」の拡充。第2に、人材サービス会社への規制の見直し。第3に、裁判で不当解雇と判断された際の金銭解決制度の検討を挙げている。

 第1と第2は、各企業に滞留している40歳以上の「中高年人材層」の流動化を加速することが狙いで、要するにリストラ支援会社を規制緩和し、リストラによる転職支援に助成金を厚く払うというものである。第3は、解雇裁判で企業が負けても金を払えば解雇できるようにする、というものである。

 つまり「失業なき労働移動」政策は、聞こえはいいが、本質は野蛮な搾取制度をめざすものであり、事実上日本型終身雇用制度からの最後的脱却を促す政策である。これは相も変わらず政府がリストラ路線を推進していることを示している。これでは日本経済はデフレ傾向を強めるばかりであり、個別企業の目先の利益拡大になるかもしれないが、国民経済は縮小再生産の傾向を一層強めるであろう。愚劣としか言いようがない政策だ。

 日本経済は投下すべき資本はたくさんあるのに、個人需要が縮小しているため資金が資本主義的投資に回されないことが問題なのに、政府の経済政策が相変わらず個別企業の目先の利益を、リストラ経営で助成する発想から抜け出せていないことが問題なのである。消費を賃上げで喚起し、設備投資を促し、生産性を挙げる政策が今の日本には必要なのである。

 ドイツでは今でも5%の賃上げがおこなわれ経済が拡大再生産を保っているのは、彼らが資本主義経済を理解しているからである。ドイツではリーマン・ショック後マルクスの資本論が売り切れになるほど売れた。日本ではマルクス経済学が衰退して、デフレ時の取るべき政策ですら政策当局が理解していないのである。

 第3の解雇の金銭解決については、政府はそれがもたらす破壊的被害を理解しているのであろうか?おそらく理解していないから「金銭解決制度の検討」を挙げているのである。労働組合法の第7条不当労働行為を金銭解決制度は完全に空洞化する。強い労組を誘導することで資本主義経済を高度成長させ、同時に軍国主義の再生を防止するというGHQの「戦後労働改革」を根底から破壊するだけでなく、戦後一貫して積み上げてきた判例法制を全てゴミかごに投げ入れることになる。

 金銭解決が法制化されるなら、労組の中心人物は真っ先に解雇され、たとえ裁判に勝ってもわずかな金銭で合法的に排除されるなら、合法的労働運動は姿を消し、労働運動は非合法的形態へと姿を変えるであろう。日本社会は労働者が合法的救済を受けられなくなり、労働者の闘いは生きるための非合法闘争の時代を迎えることになるであろう。日本社会はテロの時代に突入することになりかねない。安倍政権はまさに戦前の暗黒の時代へと逆戻りしたいのであろうか?我々は解雇の自由化に断固反対する!
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