「古きを訪ねて新しきを知る」(=温故知新)という言葉がありますが、歴史上の闘いの教訓は現代の労働運動にも役立てることができます。過去の戦争は戦略・戦術の宝庫です。戦争が重要なのは歴史打開力があることです。つまり戦争が人類の歴史を発展させてきたのです。しかしここでは労働運動を発展させる上でいかに戦略・戦術が重要であるかを書きます。
最近労働相談を受けていると、他のユニオンでの闘いが、戦略・戦術を決めないまま、団体交渉を行い、相手が譲歩せず行きづまると放置する、相手企業の善意に期待するだけのお粗末な闘い方で、最後は会社の言いなりになるユニオンに疑問を持ち、新世紀ユニオンに相談して来る人が増えました。ダメユニオンの、行き当たりばったりの団体交渉申し入れにも、少しは成功体験があるのでしょう。しかし、それでは話しの分かる経営者相手しか勝利することは出来ません。
日本の憲法は労働三権を認めています。これを受けて労働組合法は労組の争議行動を認めており、これによる損害が出ても刑事免責・民事免責を認め、労働条件等が労使の力関係で決まるようにしています。つまり戦争と同じで労働運動では戦略・戦術が勝敗を決定する仕組みになっています。労働運動に戦略・戦術を適用しようとするなら、雇用契約をめぐる法律的「土俵」を認識し、何が相手を譲歩させる切り札になるか?どの法律的規定を利用することが雇用を守る上で重要かを知らねばなりません。
次に、会社側に何を要求するか?交渉で会社側に譲歩を迫るユニオンの側の切り札は何か?相手側に圧力をかける切り札がないなら、切り札を作る配置をしなければなりません。つまり大まかな闘いの配置を検討しなければなりません。(これが戦略)次に戦略を具体化する上での勝利の必要条件をどうつくるのか?どのような証拠を必要としているか?どのように証拠を確保するのか?(これが戦術)
状況を把握し、分析し、闘いを勝利に導く戦略・戦術を立てれば、ユニオンの闘いは100戦して100勝できるのです。世間には闘い方を研究せず、行き当たりばったりに団体交渉を申し込み、相手の善意だけが頼りのようなバカな闘い方をしている経験主義のダメユニオンが多くあるということです。闘いを経験したら総括して、正反両面の教訓を文章化すれば、ユニオンの力量も高まっていきます。新世紀ユニオンはそのようにして戦略と戦術を豊富にしてきました。
労働運動は戦争と同じで科学的に闘うべきであり、先の見通しもなく団体交渉をすぐ申し込むべきではありません。団体交渉を申し込むということは組合員を公然化することです。公然化すれば会社は組合員が増えることを恐れて包囲・攻撃して来るのは戦争と同じで当然なのです。つまり企業に対し組合員を公然化するのは戦線布告と同じなのです。従って団体交渉を申し入れるときは勝てる配置が完成していなければならないことを指摘しなければなりません。
ふつう労働組合が賃上げ要求を掲げ、その要求を実現するためにストライキを設定します。しかし個人加入ユニオンの場合1人の組合員の場合が多いので、そうした戦術はおこなえません。そこでユニオンのブログで会社の汚い行いを暴露し、宣伝で打撃を与え要求を受け入れるならブログを削除してもいいですよ、と言えば相手企業にもよりますが世間の評判を気にする企業の場合は要求を受け入れる場合があります。つまり相手企業が譲歩する切り札を用意することが重要となります。
ユニオンが組織的に大きくなり、動員力が付くと会社門前でユニオンの加入宣伝を行うことも可能です。この宣伝が相手企業の脅威になると譲歩を引き出す切り札にできる場合があります。つまり個人加入ユニオンの場合ストライキを圧力手段とできないので、交渉の切り札に創意工夫がいるのです。ユニオンは、要求を勝ち取るために戦略・戦術を持って闘うように心がけなければなりません。会社で働き続けるのに不用意に団体交渉を申し込み、あげく組合員が経営側の包囲・攻撃の標的になる事態は避けねばなりません。
賃下げを阻止する課題等の場合すぐ団体交渉で公然化するのは考えものなのです。賃金の時効は2年間なので、仲間を増やし闘争の証拠をつかみ、証人が用意できるようになってから闘っても遅くはないのです。
ユニオンの闘いを科学的なものにすることは、日本のユニオンにとって重要な課題であるのです。その場合法律的枠組みを研究し、戦略・戦術を検討することから始めるように心がけてください。
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