労働者は誰でも入社時に、会社の情報は他に漏洩させないとの誓約書に署名しています。これが労働者の認識を縛り、労働相談に来てもユニオンに就業規則などの諸規程を見せない人が時々います。これでは相談になりません。企業の機密とは何かを知っておかないと、認識上ユニオンにも加入できない人がいます。
ここで言う企業の機密とは、法律的に言うと非向知性の情報で、これが企業外に漏れると会社の正当な利益を害するもの、あるいは使用者が第3者の保護義務を負う個人情報の事で、労働者もこれらには秘密保持義務を負うことになります。具体的に言うと(1)顧客名簿などの情報(2)特許などの技術情報・企業の販売ノウハウ等(3)個人情報の事です。
従って、顧客名簿を社外に持ち出し、紛失すると懲戒処分の対象になります。また会社の開発した技術情報も他社に漏らすと損害賠償を請求されます。しかし会社の就業規則や諸規程を代理権のある労働組合や弁護士に見せるのは情報漏洩には当たりません。これが漏れて会社が(違法行為をしていない限り)損害を受けることは絶対に有りません。
労働者の中にはこうした秘密保持義務についての知識がないため、自分の加入するユニオンに一切資料を見せない人もたまにいます。普通一般社員(ぺーぺー)には、企業が機密に接触する仕事を与えるはずがありません。ただ外部組織に加入することを恐れて会社が大げさに誓約書に署名捺印させて認識上拘束しているだけです。
同様に会社が競業避止義務の誓約書を取っている場合があります。会社のノウハウが他社に漏れるのを嫌う会社が入社時に署名捺印をさせている場合があります。競業避止義務が問われるのは会社と同じ事業を顧客を奪いながら立ち上げる場合で、一般的に労働者には職業選択の自由があり、退職後に同業会社で働いても競業避止義務違反にはなりません。もちろん競業避止義務違反に当たるケースもある場合があるので、心配な人はユニオンに相談して下さい。
秘密保持の誓約書と競業避止義務の誓約書は合わせて署名させる場合がありますが、いずれも一般の社員には問題となるものではありません。開発・研究業務・あるいは営業職で顧客名簿に接する人以外は関係ないことです。しかし顧客名簿を同業者に渡したり、自分が顧客名簿を利用して退社した会社と同じ事業を興す場合は損害賠償を請求される可能性があります。
会社の特許技術を韓国の企業に流して損害賠償を請求された例が実際に有るので研究職の人は注意が必要です。最近電気製品販売会社の販売ノウハウを競争他社に漏らして損害賠償を請求された例もあるので、その会社特有の販売ノウハウも企業機密に含まれます。同業者に転職する時は機密を保持する義務がありますので注意が必要です。
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