問 会社から従業員に「新人事制度」の説明がなされました。それによると新しい人事制度は総合職・専門職・一般職に分けることになります。
私は女性なので一般職になりますが、自分の賃金がいくらになるのか分かりません。この人事制度では同時に「等級職能基準の見直し」と、「評価の処遇への反映方法の見直し」が書かれていますがよく分かりません。たぶん女性の賃金を切り下げるのが会社の狙いではと心配しています。
コース別人事制度導入への対処法を教えてください。
答 コース別人事制度は1985年の男女雇用機会均等法の制定を受け、これまでの男女別の賃金を維持する目的で導入されたのが始まりです。現在では安倍首相が「同一労働同一賃金」「女性が活躍できる社会」を提唱しているため、男女差別賃金を温存するコース別賃金は廃止する動きも出ています。今頃コース別人事制度を導入する会社があることが驚きです。周回遅れの会社ですね。
質問者の「新人事制度」が、男女でコース選考基準や採用・運用で異なる取り扱いをすると男女雇用機会均等法違反となります。
最近多いのが就業規則の作成・変更による労働条件の切り下げです。いわゆる就業規則の不利益変更については、労働契約法第9条で「使用者は労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することは出来ない。」と定めています。これがこの問題での労働者の原則的立場です。
ただし、就業規則の変更が合理的であり、かつ変更後の就業規則が労働者に周知されている場合には、例外的に労働者との合意がなくても、就業規則の不利益変更ができる(労動契約法10条)ので注意して下さい。就業規則の変更に当たっては、民主的に選出された過半数代表者の意見聴取が必要です。また「変更後の就業規則を労働者に周知」しなければなりません。
労動契約法10条が就業規則の不利益変更を認めている点については新世紀ユニオンとしては、賃金の傾向的低下を容認するものとして、絶対に支持できません。一国の総理が「女性が活躍できる社会」を提唱し、賃上げを経済界に要請している状況の下では、就業規則の不利益変更容認は廃棄されるべき条項であると認識しています。
さて質問者の会社が導入する「新人事制度」で女性労働者の賃金がどの程度下がるのかを会社に正すのがまず必要なことです。一部の労働者が大幅な不利益を被る場合にはその労働者については相当性を欠き(合理性がないので)その労働者を拘束できないというのが裁判所の判断です。
就業規則の変更が合理的かどうかの判断要素は以下の通りです。
(1) 労働者の受ける不利益の度合い。
(2) 労働条件変更の必要性。
(3) 変更内容の相当性。
(4) 労組などとの交渉の状況。
(5) その他の就業規則変更の事情に照らして合理的か。
これらを検討する必要があります。
具体的にはユニオンと相談しながら証拠を残しながら闘うようにして下さい。
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